DNAの遺伝情報を望み通りに書き換える
「ゲノム編集」と呼ぶ新技術。
これまでの「遺伝子組み換え」技術よりもはるか
に正確に遺伝子を操作できるといいます
ヒトの遺伝子にどこまで応用すべきかについて
議論する国際会議がアメリカで始まりました。
「ゲノム編集」と呼ぶ新技術。
これまでの「遺伝子組み換え」技術よりもはるか
に正確に遺伝子を操作できるといいます
ヒトの遺伝子にどこまで応用すべきかについて
議論する国際会議がアメリカで始まりました。
小林雅一氏(KDDI総研リサーチフェロー)に
よれば、遺伝子を操作する技術自体は、かなり
以前から存在していたが、従来の遺伝子組み
換え技術では、操作精度が極めて悪く、「100万
回に1回」程度の成功確率でしかなかったと
いいます。
これに対して2012年頃から急速に台頭した
「Crispr-Cas9(クリスパー・キャス9)」と呼ばれる
最新のゲノム編集技術では、バクテリア由来の
特殊検知能力を駆使することで、成功確率が(
少なくとも現時点で)「5回に1回」程度と飛躍的
に向上。
その結果、従来の技術では狙った遺伝子を
組み換えるのに最短でも1年以上かかっていた
のが、「数日」にまで短縮。今後、さらに短縮
されると見られています。
「遺伝子治療」や「iPS細胞」など他の技術と
Crispr-Cas9を組み合わせて使うことで、癌や
アルツハイマー病をはじめ「人類の敵」とも
言える様々な病気を、従来とは全く違う角度
から治せる可能性が出てきました。
小林氏によれば、Crispr-Cas9の最大の特徴
は「技術の使い易さ」にあるといいます。
「従来の遺伝子操作技術の場合、かなりの経験
を積んだ科学者にしか使えなかったが、Crispr-
Cas9ではほとんど経験の無い科学者でも、
短期間の訓練で誰でも使えるようになる」
すでにCrispr-Cas9に必要な各種材料などを
キット化したDIY商品が小売価格700ドルで
発売されているそうです。
技術の極端な使い易さと相まって、Crispr-Cas9
の濫用へとつながる恐れが現実味を帯びてきて
いる状況。
そして今年4月、中国の研究者が人間の受精卵
の遺伝情報をゲノム編集で改変することに成功
したと発表。
これに対して、拙速な応用に対する懸念が世界
で広がり、米政府が「こえてはいけない一線」と
科学者に自制を求める声明を出し、日本政府も
対応を議論。
受精卵などの遺伝情報を書き換えれば、遺伝
病を治せる可能性はあります。しかし現時点
では治療手段として、どこまで有効なのか
確かめられていません。
子や孫の世代に望ましくない影響が及ぶ恐れ
も払拭しきれず、親の希望通りの外見や能力
をもたせた子ども(デザイナーベビー)の誕生
に応用される懸念もあるといいます。
”特に懸念されているのが、人の受精卵や胚
の段階でCrispr-Cas9を適用することだ。
これらは「Germ line(生殖細胞系列)」と呼ば
れ、この段階で遺伝子を改変してしまうと、
その遺伝的形質が子孫へと引き継がれてしまう。
たとえば、親が生まれてくる子供を自分の願い
通りに設計してしまう「デザイナー・ベイビー」、
さらにその先には「類稀な知能と強力な肉体
を兼ね備えた新人類」が今後生まれてしまう
ことも理論的には考えられる。
それだけなら良いが、もしもそうした新人類が
「極端に攻撃的な性格」を育んでしまえば、
どうなるか?
地球を破滅に導く最終戦争が起きるかもしれ
ない。”(小林雅一氏)
の段階でCrispr-Cas9を適用することだ。
これらは「Germ line(生殖細胞系列)」と呼ば
れ、この段階で遺伝子を改変してしまうと、
その遺伝的形質が子孫へと引き継がれてしまう。
たとえば、親が生まれてくる子供を自分の願い
通りに設計してしまう「デザイナー・ベイビー」、
さらにその先には「類稀な知能と強力な肉体
を兼ね備えた新人類」が今後生まれてしまう
ことも理論的には考えられる。
それだけなら良いが、もしもそうした新人類が
「極端に攻撃的な性格」を育んでしまえば、
どうなるか?
地球を破滅に導く最終戦争が起きるかもしれ
ない。”(小林雅一氏)
初日の話し合いでは、「ヒトの遺伝子は複雑で
まだ十分に理解ができておらず、次の世代に
引き継がれるような編集には慎重であるべき
だ」といった懸念が示された一方、「あまりに
研究を制限すれば、この技術がもたらす
大きな可能性を逃すことになる」という意見も
出ました。
こうしたゲノム編集技術の発展と抱える問題を
見ながら、以前鷲田清一先生が「科学者」に
ついて語っていたことを思い出しました。
”私は、科学者に教養があるということと、本当
の科学者であることは、同じだと思います。
自分がやっていることを、まずは科学の世界の
中で、ひいては、人類史の中でちゃんと位置
づけられる、そして、それを自覚しながら自分の
研究を遂行できる、それが本当の科学者である。
と同時に、それができる人というのは、本当の
教養を持っている、つまりは、自分の専門の外
に、いつもアンテナを張っている人ということ
です。”
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