『どんな価値観を与えたいのか』

このまま人工知能(AI)が進化していけば、どんな未来が到来するのか?来たるべき「人工知能社会」に向けて、「人間とAIの共存する未来」をどのようにしていくのか?

ホワイトハウスで、政府がAIというパワフルなテクノロジーをどう制御し、どう利用していくのかを検討し始めたとの報。

技術が人類の未来に与える影響を研究する英国オックスフォード大学「人間の未来研究所」の所長、ニック・ボストロム博士の言葉は大きな示唆を含んでいます。(朝日新聞のインタビュー記事)

「AIは人間を超える知能を持った機械です。いったんできれば、物を発明する点でも人間を超えた能力を持つことになる。さらに優れた知能をすぐにでもつくることができる。ほかの技術分野でも、さまざまなものを自分で勝手につくっていくことでしょう。きわめて強力な存在になり得ます。

それ以降は人間の手を離れてしまうという意味で、人間にとってこれが『最後の創造物』になる、と
いわれたりするゆえんです。単に新しい道具というにとどまらず、根本的に異なるものだと考えるべきです。」

AIによって、6割以上の雇用が奪われるとの予測が出るなど、急速に実用化が進むAIの社会的インパクトが注目されています。大学進学の適性試験でも、小論文の採点にAIが導入され、その是非をめぐり論争が続いています。
各国が実用化に向けて、しのぎを削る自動運転技術EUでは、人命に関わりかねない判断をどこまでAIに委ねるべきか、国や自治体を巻き込んで議論されています。

先日放映のNHKスペシャル”「天使か悪魔か」羽生善治 人工知能を探る”

”技術の進歩に対して、それをフォローする制度やルールを作っていくのは、難しいことかもしれませんが、少なくともどんな未来が来ても、それに驚かないという意味で、なんというか「心構え」というのでしょうか、それを持っておいたほうがいいと思います。より社会に広く浸透していくときには、コンセンサスは必ず必要になるはずです。こうした議論はこれから先、個々の案件でたくさん出てくるでしょう。ですから、導入にあたって、こうしたコンセンサスを考えるべき時がきていると感じます。”

将棋界・最高の頭脳である羽生さんは、圧倒的な思考のスピードと深さで将棋界に君臨していますが、日々、「人間にしかできないことは何か」を考え続けているといいます。
”絵を描くとか、自動運転とか、医療の診断とか、これだけ汎用的というか、幅広く、いろいろな世界
で進歩が起こっています。今までだったら、人が最も得意とすることなど、AIが関与するのは考えもしなかったことでも、もう具体的なところまで来ているのを目の当たりにすると、『この世界だけは特別で、絶対AIが入ってくる余地がない』ということはないのではないでしょうか。

『これは人間しかできない』とか、『これはAIには出来ない』ということはないということを前提に考えているほうが、いいのではないかなと思います。”


そもそもAIと呼ばれるものには二通りあるといいます。

①「人間の脳みそをそのままつくる」例:鉄腕アトムのような人間に近いものをつくるための技術
②「人間のすることを機械の知能をつかってする」例:囲碁や将棋をするコンピュータなど
そして現在研究されているものの多くは②。しかし、すごいスピードで進化していることは少し調べただけでもよくわかります。

ボストロム博士が、「人間レベルのAIが50%の確率で登場するのはいつごろか」と世界中の専門家に聞いたところ、答えの中心値は、2040年もしくは2050年その登場後に、短期間で人間を超えるAI出現するといいます。

「科学や技術だけでなく、人間社会のあらゆる面に根本的な変化をもたらすでしょう。その影響の度合いは、そこに到達する前に、いかにコントロールするかという課題を解決できているか否かによります。

真に知的な機械が安全かつ人類に利益をもたらすことをいかに保証するか。そのためには、たとえば正義、公正、美、幸福、喜びなど、どんな価値観を与えたいのか、どんな目的を持たせるのか、そしてそれらをどのようにコンピューターに組み込むのか。

AIがあなたの考えていることを単に理解するだけでなく、実際に行ってくれるように、どうやって動機付けをするのか。まだ解のない、技術的な大きな問題です。」


AIと人間社会は、今後どう折り合いをつけていけばいいのでしょうか。
知的な機械をつくるための技術を追う馬安全性を追う馬と、2頭の馬の競走状態がAI開発の現在の姿というボストロム博士
前者にはるかに多くの資源が注がれている中、安全性という馬も何とか前に進めなければならない
との博士の言、その通りと思います。

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”