『生きる力を育む』

1800年頃、当時欧州で隆盛にあったナポレオン1世
は、「国家が国民を育てる」という仕組みを確立
しました。 

プロイセン王国(現在のドイツ)も富国強兵
のため
に、それまで教会がやっていた教育を国家に
移し替えます。 

明治に入った日本ではその制度に倣い、明治5年
「学制」 改革
を行います。
文部卿の監督下で全国に学校を置く 仕組み。
 

近代国家として育成すべき国民像を明確にし、
国民は天皇の臣民であることを教育する
いうものでした。

全国を8つの大学区に分け、それぞれの大学区を
32の中学区に分けて、全国に256の中学区
あったそうです。 

それぞれの中学区をさらに210の小学区に分けて、
全国で53,760の小学校が造られたといいます。 

全国を学区に分けていくということは、
学校を全国に均等に設置していくという発想に
基づくもので、子どもたちが自分の住む地域の
学校に通える
ようにしたということ。

この学制発布と同時期に政府は、「被仰出書(おうせい
だされしょ)」を出して、学校を設立した理由を示して
います。 

”学問を修めることによって生を遂り、
算を修め、業を盛んにする。

立身治産、出世してお金を儲けるためには
学問が必要である”
 
 

学校に通って学問を学べば、立身治産ができると
啓蒙するものでしたが、学校で教えようとした
学問は実学が中心で、いわゆる開明政策の一環と
して学校が利用
されたものでした。 

実学が中心となるため、教育内容はアメリカを中心に
学び、アメリカの教科書を翻訳したテキストを教材と
して活用していたといいます。

つまり学校制度はフランスから、教育内容は
アメリカから学んだ
ということになります。

近代国家の特色は「国民国家」、すなわち愛国心によって
一つにまとまっている国家
と言い換えることができます。

そして愛国心を支柱に国民をまとまるためには、
国民みんなが同じ言葉を話すことが望ましい。 

近代の学校教育において国語教育が重視された理由

そこにありました。また近代化を達成していくために
読み書き計算が大切にされました。 

その後、太平洋戦争の終戦(1945年)から日本の教育
も大きく変転していきます。
 

連合軍総司令部(GHQ)
がとった施策は、日本を二度と
戦争出来ない体質にすることを目的
とするものでした。

その為に支配構造を破壊し、経済力を弱め、精神構造を
変える
ことを徹底していきます。 

GHQは日本政府に5大改革の一つとして、教育の自由化
を命じました。

アメリカは日本軍の強さの原因として、強力な天皇崇拝に
よる国民世論の統一、忠君愛国主義、武の尊重にあると
考え、そこで天皇陛下に人間宣言を出させ、
神道に対する国家の援助を禁止
します。 

そして、日本精神を築いたものは教育勅語とそれに
基づいた修身教育
であるとして、禁止します。
また歴史や地理の教科書で問題ありとした部分は、
墨を塗り読めなくしました。

それでも不十分として 、修身・日本史・地理の授業の
停止
を命じ、教科書を回収します。

その後、アメリカの教育使節団が来日し、アメリカ型の
6・3制採用を勧奨する報告書を作成。

これに基づいて1947年から義務教育が 3年延長される
大改革が実施されました。 

戦後から現在までの教育の根本法となる教育基本法
は、1946年公布されます。

具体的な改革として、学校体系を小学校6年、
中学校3年、高等学校3年、大学4年という、6・3・3・4
 の基本体系に変え、中学校は義務制となり、
国民全体に対して共通の普通教育を与えるものとして
成立しました。

その後、戦後復興と高度経済成長のもと、経済的な豊かさ
を実現し、バブル経済破綻からは低成長期に入りました。 

2002年から順次実施された学習指導要領による教育内容
の削減など、いわゆる「ゆとり教育」の実施や学校週5日制
の完全実施、国際的な学力調査の結果などを背景に、
子どもたちの学力低下の議論が現在起こります。 

また全国的な傾向として、児童生徒が授業を十分に理解
していない
といった実態や、いじめ、不登校などの教育
課題
が依然深刻な状況です。
 

そのような状況下で2006年、「教育基本法」が
約60年ぶりに改正
されました。

2007年には小・中学校の、2008年には高等学校
の学習指導要領の改訂が行われ、「確かな学力、
豊かな心、健やかな体」をバランスよく育成し、
「生きる力」を育む
ことをめざすこととされています。

現在様々な教育面での課題に対して、全国的に
始業前や放課後等の時間を活用した補充指導、
退職教員の活用による学習の場の提供、
学校外での学習塾等との連携も行われ始めて
います。 

「言語活動の充実」や「理数教育の充実」
など、
新しい学習指導要領で示された改善事項を
踏まえながら、小学校での学びを中学校へ円滑
につなぐシステムの構築が求められています。 

また、学習意欲の向上や思考力・判断力・
表現力の育成
など、 全国学力・学習状況調査
結果の分析で、明らかになった課題解決に
向けた取組も求められるものです。

遠く目を欧州に向けると、各国では直面している
課題である、国民国家がいかに多文化多民族国家
へと転換していくかについて、 多文化教育に取り
組み始めています。 

自分とは異なる文化を持った人が、身近なところで
暮らすグローバル化社会において、違った言語や
異なる宗教を持つ人同士が共生していく社会の
創造
。 

日本においても今後求められるものです。
 

 

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”