小麦・米・トウモロコシという3つの作物は、人間の栄養源
として大きな役割を担っています。
大気中の二酸化炭素が増加することにより、これら作物の
栄養素が減少して
しまうことが明らかになりました。
として大きな役割を担っています。
大気中の二酸化炭素が増加することにより、これら作物の
栄養素が減少して
しまうことが明らかになりました。
米ハーバード公衆衛生大学院などの研究者が、日本・豪・
米国の7か所の実験農場で穀物6種41品種の調査結果を
ネイチャー(Nature)に発表したもの。
亜鉛または鉄分が不足している人は、現在世界中に20億
人ほどいるといいます。
亜鉛の不足は免疫系に影響を及ぼし、鉄分の不足は貧血
の原因となります。支援がなければ、貧困国の栄養状況は
いっそう悪化する恐れがあります。
健康に育つための十分な栄養が足りていないことを、
「栄養不良」といいます。
栄養不良の子どもは健康に育つことができないだけでなく、
病気にかかりやすくなったり、また病気が治りにくい原因に
なったりもします。
年間660万人も失われている幼い命。
この死の3分の1以上に栄養不良が関わっています。
栄養不良がもたらす幼いころの知能や身体の発達の遅れ
は、その後も子どもたちの人生を脅かし続けます。
2011年現在、世界の5歳未満児のうち、推定26パーセント
(1億6500万人)が発育阻害であり、推定16パーセント(
1億100万人)が低体重の状態にあります。
この割合が最も高いのは南アジア(3人にひとり)。
地球上の人々は現在、日々の栄養源の約60%を小麦・米・
トウモロコシといった作物から得ており、発展途上国において
その割合は70~80%にまで増加します。
そしてこのカギとなる栄養素が亜鉛と鉄。
これらは作物が育つ過程で土から吸収されるものです。
この研究によると、大気中における二酸化炭素レベルの上昇で、
穀物や豆科植物に含まれる亜鉛や鉄、そして場合によってはタンパク質
が減少することが分かりました。
研究では、小麦・米・トウモロコシ・大豆・エンドウマメ・モロコシなど
143種類の作物を、通常の環境下と二酸化炭素の濃度が高い環境下
で育て、その栄養価の違いが比較されました。
2012年における大気中の二酸化炭素濃度は393.1ppmですが、
40~60年後には約550ppmにまで上昇しているとみられているため、
実験では人工的に二酸化炭素濃度が550ppmの環境を豪・日本・米国
に作りだし、1~6シーズンにわたって作物の栄養レベルを調査。
(これは悲観的なシナリオで今世紀半ばにも到達するとされているより
低い濃度。国連(UN)は気温上昇を2度以内に抑えることを目標にして
おり、このシナリオでは気温は産業革命前より3度以上上昇するとされて
います)
その結果、二酸化炭素濃度が高い環境下で育ったC3植物(イネや
コムギといった主要作物)と豆科植物に含まれる亜鉛と鉄分の量は、
通常環境で育った作物に比べて少ないことが判明しました。
小麦は、含有する亜鉛、鉄分、タンパク質の濃度が、通常の環境で
栽培された小麦よりもそれぞれ9.3%、5.1%、6.3%少ない。
コメでは、亜鉛、鉄分、タンパク質の濃度がそれぞれ3.3%、5.2%、
7.8%減少した。
ただし、栄養成分の減少幅は品種によって大きく異なったそうです。
エンドウマメにおける栄養素の減少量はわずかで、C4植物(高温や
乾燥、低CO2、貧窒素土壌など苛酷な気候下に適応した植物)に
おいては、栄養素の減少が見られなかったとのこと。
これはC4植物がC3植物に比べて効率的に二酸化炭素を固定できる
ためと考えられています。
大気中の二酸化炭素が増えると作物内の炭水化物が増加し、
その代わりに栄養素が減少するという仮説もありましたが、
作物によって栄養素の減少には差があり、現段階でハッキリ
した理由は分かっていません。
大豆やナッツ類にはフィチン酸塩という反栄養素が含まれており、
消化管の中で亜鉛や鉄、マグネシウムなどのミネラルと反応し、
腸からミネラルが吸収されるのを妨げる働きをします。
(すべての豆類には、フィチン酸塩がある程度存在し、大豆には
特に大量にあるといいます。
フィチン酸塩は、消化管の中で、ミネラル(例えば亜鉛、銅、鉄、
マグネシウム、カルシウム)をきつく拘束する働きがあります。
特に亜鉛との親和性が強いのですが、亜鉛は、傷の治癒、タンパク
質合成、生殖面の健康、神経機能、脳の発達を支えるミネラル。
しかし、発酵大豆を少量摂取することは、体内の生態系を築くのに
役立ち、消化管に友好的で豊かな微生物相を提供し、ひいては
消化、栄養の吸収、免疫強化に役立つそうです)
今回の調査で、小麦に含まれるフィチン酸塩レベルに減少が見られた
のですが、例え植物内でのフィチン酸塩レベルが二酸化炭素濃度の
上昇によって下がってしまっても、人間の体内で利用される亜鉛の
量は変わらないことも判明。
なお、小麦以外の作物についてフィチン酸塩レベルは変化しなかった
そうです。
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