『ネクスト・ソサエティをもたらす社会の変化』

”ネクスト・ソサエティにおいては、経済が社会を
変えるのではなく、社会が経済を変える。

経済が社会を規定するとの思想どころか、
経済が経済を規定するとの理論からさえ脱却
しなければならない。”


こう述べたのは、P.F.ドラッカー教授
誰もが知っている「マネジメントの父」であり、経営学
の第一人者、社会思想家。

ドラッカー教授は、「万人の幸福」を願う強い意志
によって、無形の実在である原理原則を言語化
ネクスト・ソサエティ(次なる社会)の姿を描写
しました。

その生涯を通して取り組まれたテーマは、
人が人として価値ある人生を送るために、
新たな社会はどうあるべきか、
進化する組織はどうあるべきか、
本来人間はどうあるべきか
、ということに尽きる
でしょう。

「日本では誰でもが経済の話をする。だが、日本に
とって最大の問題は社会のほうである。

この40年あるいは50年に及ぶ経済の成功を
もたらしたものは、社会的な制度、政策、慣行
だった。

その典型が系列であり、終身雇用、輸出戦略、
官民協調だった。日本の社会的な制度、政策、
慣行は、1990年頃まで有効に機能した。

だが、もはや満足に機能しているものは1つもない。
再び新たな制度、政策、慣行が求められている。

日本において求められているものは社会的な革新
である。

その典型の1つが、いかにして雇用と所得を確保
しつつ、同時に、転換期に不可欠の労働力市場
の流動性を確保するかという問題である」

「民営化」「知識労働者」「目標による管理」を初めと
して、現代のマネジメント思想において、ドラッカー教授
が創り出した概念や用語は数知れません。

「ポストモダン」や「断絶」、「ナレッジ(知識)」と
いった目まぐるしく変化する現代を照らし出す原理
も、
ドラッカー教授が最初に示したもの。 


ドラッカー教授は、急激に変化しつつあるのは、
経済ではなく社会のほうである
と喝破しました。
IT革命はその要因の1つにすぎないと。

人口構造の変化
、特に出生率の低下とそれに
ともなう若年人口の減少
が大きな要因。

若年人口の減少は、それまでの長い流れの逆転で
あり、かつて前例のないものです。

世界の経済大国日本では、人口は2005年に
1億2500万のピーク
に達しました。
ところが2051年には1億人を切るといわれています。

その手前の2030年においてさえ、65歳超人口
が成人人口の半数を占める
との予測が出ています。

日本の出生率はドイツ並の1.4
老年人口の
増加は300年の趨勢の延長線上
にあります。

これに対し、若年人口の減少こそまったく新しい
現象
です。

「今後50年間、日本は年間35万人の移民を
必要とし、労働人口の減少を防ぐためには
その倍を必要とする」

この点で米国が優位にあるのは、若年人口の
だけではありません。移民に対する文化的な
馴れ
があることです。 

社会的、経済的に同化する方法
を身につけて
いるのは強みです。 

ネクスト・ソサエティをもたらす社会の変化は、
働く人たちの役割を規定していきます。

教授が言わんとしたこと、それは1つひとつの
組織、1人ひとりの成功と失敗にとって、
経済よりも社会の変化のほうが重大な意味
を持つ
にいたったということでした。 

















人口構造の変化がもたらす最大の影響
は、
文化と市場の多様化

企業をはじめとする組織の短命化も、労働市場
の多様化を促進
します。これまで雇用主たる
組織のほうが被用者よりも長命であることが
常識
でした。

しかしこれからは、被用者、特に知識労働者の
労働可能年限のほうが、うまくいっている組織
の寿命をさえ上回り
ます。

30年以上存続する企業はほとんどなくなる
ことを覚悟しなければなりません。

すでにアメリカでは、「第2の仕事」「第2の
人生」
が流行語になっているといいます。
パラダイムは大きく変り
ました。

第1に、知識が主たる生産手段、すなわち資本
となったのです。知識は1人ひとりの知識労働者
が所有します。

第2に、今日でも働きての半分以上がフルタイム
で働き、そこから得るものを唯一または主たる
生計の資としているものの、ますます多くが
正社員ではなくパートタイム社員、臨時社員、
契約社員、顧問
として働くようになりました。

第3に企業活動に必要とされる知識が高度化
し、専門化
し、内部で維持するには費用がかかり
すぎるものとなりました。

しかも、知識は常時使わなければ劣化します。
それゆえ、時折の仕事を内部で行なっていたの
では成果をあげられなくなつたのです。

あらゆる知識労働者に3つのことを聞かなければ
なりません。

■強みは何か、どのような強みを発揮してくれるか 
■何を期待してよいか、いつまでに結果を出して
くれるか 
■そのためにどのような情報が必要か、どのような
情報をだしてくれるか
 

ドラッカーが指摘したように、日本は未だ19世紀の
ヨーロッパの状態
。官僚が自分たちの身を守るため
に規制も解かず、従来のやり方を踏襲していると、
大変なことになってしまうと。

教授は日本は全労働人口のうち製造業に25%
、農業人口は4.7%
もおり、この十年で製造業の
人口が10%をきらないと危ない
と指摘しました。

ネクスト・ソサエティをもたらす社会の変化
が、
働く人たちの役割を規定していきます。
すなわち、経済よりも社会の変化のほうが
重大な意味をもつ
にいたったということ。

「歴史にも境界がある。目立つこともない
その時点では、特に気づかれることもない。

だがひとたび越えてしまえば、社会的、政治的
な風景が変わり、気候が変わる。そして言葉も
変わる。

「新しい現実」がはじまる。」
(ピーター・ドラッカー)




















”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”