ジェームズ・ボンドは、英国情報部のエース諜報員。
「007」(00セクションに所属する7番の番号を振られた
エージェント)のコードネームを持つ男。
「007」(00セクションに所属する7番の番号を振られた
エージェント)のコードネームを持つ男。
大英帝国が誇る諜報機関、それが情報局秘密情報部
(SIS)。SISには、大きく分けて二つの部署であるMI5
とMI6があります。
MI5は、英国国内で行動する外国のスパイ(冷戦時は
主として共産陣営)の摘発や、国家機密の漏洩阻止
などの防諜活動が主任務。
国内で活動するIRAやアラブ系テロ組織の情報収集や
取り締まりも行っているそう
映画の「007」シリーズは、英国作家イアン・フレミング
のスパイ小説が原作の始まり。
第1作目「ドクター・ノオ」から最新作「スペクター」まで、
主人公ボンド役は初代のショーン・コネリーから現在の
ダニエル・クレイグまで6人代変わりしました。おなじみ
の「ジェームズ・ボンドのテーマ」は変わりませんね。
さて「COURRiER」誌に、大変興味深い内容。
”アラン・チューリングの伝統は生きている!
英国政府通信本部(GCHQ)で働く暗号解読者たちは、
「一般人とは異なる脳」を持つ”
”英国政府通信本部。前身は1919年設立の政府暗号
学校。ドイツ軍の暗号「エニグマ」を解読したことで
知られる。
46年、表向きは外務省所属、実質は首相直属の機関と
して、現在の組織になった。米NSAと連携し、スパイ
衛星やハッキングによって世界中の通信を傍受・解析
し、データベース化しているといわれる。
GCHQの巨大な建物は自給自足の都市国家のようで
ある。周囲は常に専属の警官がパトロールしており、
中にはジムやサッカーチーム、大手コーヒーチェーン
の支店まである。ただしそこで働くバリスタたちは、
入念なセキュリティーチェックを通らなければ、たった
一杯のエスプレッソを淹れることもできない。
そこで職員たちは通信傍受業務に携わり、ひっそりと
働いている。彼らは、テロリストやスパイ集団など、敵
の間で交わされる通信を―おもに電話での会話や
電子メールでのやりとりを―傍受して翻訳・解読し
分析する日々を送っている。”
英国全人口の約10%を占めるといわれる識字障害者
は、読み書きの面で難しさを抱えていますが、手先を
使う作業や空間認知の面では優れた能力を持っており、
映像を使って物事を考える人も多いといいます。
GCHQは多岐にわたる分野から人材を引っ張ってきて
いるが、なかでも優秀な一握りの人々は、実は非常に
“スマート”な人々。
一般的な意味で賢いわけではなく、GCHQが必要と
するのは、一般とは異なる回路を脳の中に持つ人。
その最たる例が、アラン・チューリング。
世界初のプログラム可能な電子コンピューターを開発
したとされる彼は、識字障害者でした。
第二次世界大戦中、GCHQの前身で働いていた彼と
同僚たちの働きにより、ナチスの暗号は解読され、
戦争は最大で4年も短縮され、数百万の人々の命が
救われたそうです。
ところで2012年に開かれたロンドン・オリンピックで、
2億件のサイバー攻撃があったことはご存知ですか?
サイバーセキュリティに詳しい土屋大洋氏(慶応大学
大学院教授)によれば、この攻撃にはウェブ・サイトに
大量のアクセスを集中させて機能を奪うDDoSの他、
電気水道などのシャットダウン、計時・掲示システム
の障害、不正入場チケットの頒布などがあったといい
ます。
さらには、スタジアムの観客がいっせいに撮影した
写真を携帯電話でメール送信することで回線パンク
が懸念されましたが、英国オリンピック委員会と
官民が連携し、攻撃を乗り切りました。
DDoS攻撃対策としてサーバーを分散させ、不審な
通信を監視し、回線パンク対策として会場周辺の
回線増強を行ったそうです。
その裏でGCHQスタッフたちの活躍があったことが
想像できます。
GCHQで働く、チューリングの後輩たちはそれぞれの
能力の得意を活かしているといいます。
”神経多様性プログラムで雇われた職員にカウンセリ
ングを行う元IT技術者のデニスは、たとえ彼らが対人
コミュニケーションで挫折しても、克服することは可能
だと言う。
ただしそのためには、彼らの強みを生かしながらも
同時に、自分自身で困難な状況を乗り越えられるよう
に導くという、微妙なかじ取りが必要だ。
12年前に識字障害と診断されたデニスは言う。
「どんな障害を持っていようが、一人の人間であること
に変わりありません。私と一対一で話すこと自体が、
彼らにとって人間関係を築く行為そのものなのです。
彼らには、他人と深い関係を築いた経験があまり
ありません。ですから、私のカウンセリングは一種の
癒やしになるのです。
GCHQには、多様な神経回路の持ち主が、世間一般
より高い割合でいます。でも、ここでは、そうした特性
が表面に出てきやすいという側面もあります。
なぜなら、もし人と違う神経回路を持っているなら、
それを何らかの形で発揮する機会が多いからです」”
上に挙げた小谷賢氏によれば、
「分析における『アート』は洞察力や想像力のことで
あり、それらは経験の積み重ねや人文科学的な思考
によって磨かれるのではないかと考えられる。
そうなるとやはり分析のプロセスにおいて、すべての
主観を排した技法のみの分析というのは極端すぎる
のであって、ある程度アートの余地を残しておく必要
性はあるといえる。」
英国GCHQは、識字障害者であるからこその強みを
持つ人々を活かす場でもあり、ともすれば左脳二次元
的な技法のみになりがちな分析だけでなく、アートと
いう幅を持って情報に相対している、まさしくインテリ
ジェンスの宝庫であることが想像できます。
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