『人間は矛盾しているから生きている』

人生の前半は午前中の勢いある太陽の光の
ような、強い光に目がいきがち
なもの。

しかし、正午を過ぎ、太陽が傾き始めると日の
光は弱まり、影の部分に目がいく
ようになります。

今年50歳になった私は人生の後半ということを
これまで以上に考えるようになりました。

















大人の発達臨床心理学を専門研究する広島大
教授の岡本祐子さんは、「中年から先は、それ
までとまったく違う地平が広がっている」
と言い
ます。

アイデンティティとは、「これが自分である」と
感じるもの
のこと。

例えば、「仕事をしている私が一番私らしい」と
感じる人なら、「仕事人としての私」


「子どものためにおいしい料理を作っているの
が私らしい」という人なら、「母親としての私」


ただし、アイデンティティは一つではなく
「△△社の社員としての私」「趣味のテニスに
没頭しているプレーヤーとしての私」「父親・
主人・息子としての私」「母親・妻・娘としての
私」
と、人の中にはさまざまなアイデンティティ
があるそうです。

つまり、アイデンティティは、その人の価値観
そのもの
















そして「これが私」と信じていた自己像や価値観
が揺らぐ
のが、「ミッドライフクライシス」(中年危機
であると岡本さんは言います。

これは、さまざまなきっかけでそれまでの価値観
がひっくり返り、その後の生き方を問い直すことに
なる、人生の分岐点


経験も積み、自分なりの価値観も完成したところ
で、なぜ「それまでの自分ではやっていけない」
と感じるの
でしょうか?

”中年期はさまざまな喪失体験をしやすい時期
なのです。

自分自身の病気や怪我はもちろん、年老いた親
の介護や死、子どもの病気や親離れなどですね。

また、子どもを望んでも授からないとか、リストラ
といった経験をする人もいるでしょう。















そうした喪失体験をすると、若い頃は無限に
思えた自分の人生が、実は有限であるという
ことに気付きます。


残り時間を意識したり、場合によっては、それまで
の人生設計を変更せざるを得なくなる人もいる
でしょう。

また、体力の低下など、身体的な衰えを実感し
やすいのもこの時期です。

仕事の仕方やライフスタイルを変えざるを得なく
なるケースも出てきます。

そうした危機に直面した時には、それまでの考え
方や価値観、自分らしさでは対応しきれないの
です。”  


それまでのやり方や自分らしさが通用しない
ため、「今までの生き方は間違っていた」「
こんなはずではなかった」と、行き詰まりを
感じてしまう
というわけです。

こうした自己内外の変化を意識するに伴い、
多くの人は、「自分の生き方はこれでよいの
だろうか?」「本当に納得できる人生とは
何なのだろう?」
と、改めて自分の生き方を
ふり返り問い直します。

「ミッドライフクライシス」は、このような体験
から始まる
ことが多いようです。

もともと「危機」とは、「岐路・分かれ目」という
意味。

つまり「危機」とは、心の発達にとってさらに
成熟の方向へ進むか、あるいは退行の方向
へ陥るかの分岐点を示す
もの。




















”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”