『森は私のことを受け入れてくれる』

「日本の国土の10倍の原生林、この20年で失われたと判明」
大変ショッキングな記事タイトルを目にしました。
ランド大学の研究者の発表によるもの。その論文に

よると、現在世界に残されている原生林は約3010万

平方kmで、地球上の全陸地の23.2%


これを約20年前(1990年代半ば)のデータと比較する

と、約330万平方kmの原生林が失われたことが明らかに

なるのだそう。実に20年で日本の国土の10倍もの

面積の原生林がなくなってしまったことを意味します。


「これは驚くべき、そして大いに悲しむべき事実だ。

原生林の価値を認識し、迫る未曾有の脅威を訴える

国際的な保護方針を定めることは急を要する。


もし20年以内に真剣に取り組めば、(原生林の崩壊を)

食い止めることができるだろう。」


同研究チームを率いたJames Watsonさんの言葉に、

世界は耳を傾けなくてはいけません。

前職時代、私はまさにこの森林生態系を保全する

プロジェクトを世界の各地で取り組んできました。


そのうちの一つに、長野県黒姫にある「アファンの森」

での保全活動がありました。この活動は、作家のC.W.

ニコルさんが人生をかけて取り組んできたもの。

「日本は67%が森に覆われていますが、2%が原生林

なんです。わずか2%なんです。日本は北から南に

非常に長く伸びているので、この原生林がDNAの

宝庫なんですね。しかし過去30年において、日本の

森林があまりにも激しく伐採されてきたんです。

そしてその場所に廃棄物が投棄されていくのを

私は目撃してきました。


私は思い立って、これは「何とかしないといけない」と

思いました。捨てられた森林を。これはみなさんに

理解しにくいコンセプトなのかもしれないけれども、

日本の森林の多くは人間によって手を加えられて

いるんですね。おそらくは40%が単一樹種による

植林なんです。


非常に色の濃い植林をみなさん目にすることがあると

思うんですけれども、これが杉だったりするわけですね。

それから落葉樹からなる混交林なんですが、これが

燃料だったり、食糧だったり、動物だったり。

それなりにうまく機能していたんですね。」

(TEDxTokyo2013 )


日本に来て54年、うち黒姫に35年住んできた

ニコルさんは、地元で幽霊森と呼ばれていた暗く

荒廃した土地を少しずつトラスト。森の達人である

松木さんの協力を得て、荒地に植樹を行い、

腐り曲がった木を整理し続けました。


その結果、今では木々の間から陽光が差し込んで

地表まで届き、野生の動植物が共生できる豊かな

生命力あふれる明るい森に再生したのです。


ニコルさんは当初、この活動を個人として行って

いましたが、自分が死んだ後も永遠に森が残るように

と願い、最初に基金をつくり、その後財団法人を設立。

大学卒業後、主として金融保険系のSEとして約12年

働いていた私。屋久島登山での遭難未遂をきっかけに

自然環境保全の道を歩みました。

そして1999年、2000年とニコルさんが当時副校長

していた学校で自然環境保全を学びます。卒業後、

(株)リコーの社会環境本部で生物多様性保全の担当

として働くことに。


森林生態系保全プロジェクトの候補の一つに、

恩師であるニコルさんの「アファンの森」を推薦した

のでした。そしてニコルさんを理事長とする財団の

設立にも協力することができ、その後は社員が家族で

森林に親しむ夏休みイベントや、環境ボランティア

リーダーの研修を行うなど、企業が持続的に関わる

企画を起ち上げ、2012年に私が独立した後も

継続していると聞きます。


ニコルさんは、「アファンの森」にいると我が家に

いるような気持ちになれるとよく言っていました。


「1995年に日本国籍を取り、以来、私は日本人になった。

私はそのことをとても誇りに思っている。それでも

今なお、たいていの日本人は私を見て”外人”に区分け

する。


それはかまわない。自分で自分を見ても同じように思う

だろう。

しかし、”アファン”と名づけた我々の森にいると、

私はすっかり我が家にいる気分になる。


森は私のことを知っていて、私の”国土への愛情”を

受け入れてくれる。森はわかってくれる。

私には自分が歓迎されているのがわかる。


だから、私は日本を愛する”愛国者”だ。でも、うまい

言葉が見つからない。

奇しくも私の人生は、企業人を12年勤めること2回

時計の一回りの中で色々な体験をさせてもらいました。

秋の季節、アファンの森は紅葉に彩られた美しい姿

へと変わり、周囲の人工林から際立った美しさを

見せてくれることでしょう。


価値ある原生林を残し、天然の森を再生し保全して

いく活動が、世界的に広がることを願います。

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”