「たとえば、いい女にめぐりあったとき、
あるいはいい女と別れたときでもいい。
気心の知れた男の友人と酒を酌み交わしながら、
人生というやつの玄妙さについて
心ゆくまで語り合いたくなることがある。
そんなとき、かりに飲む相手を現存する欧米の
作家たちから選ぶとしたら
だれがいいだろうなどと夢想することも
あるのだが、いまのところ、真先に念頭に
浮かぶのが、本書の著者ハミルだ。
そのわけは、本書を一読してもらえれば
おわかりいただけるだろう。」
ピート・ハミル氏が5日、ニューヨーク市内で
亡くなったとの報道があった。享年85歳。
上記は、昔大学時代に読んだ氏の「ニューヨーク・
スケッチブック」訳者あとがきに載っていた言葉。
1980年代、ボブ・グリーンやアーウィン・ショーなど、
ニューヨークを舞台にした短編集が流行り、
日本では常盤新平さんや井上一馬さんが訳したものを、
私はよく読んでいた。
「孤独と喪失に彩られた、見えない街」NYで生き、
愛し、悩み、悲しんでいる人々。
恋人との再会、友人との別れ、酒場のひととき...
ごく普通の男女が織りなす日常の一瞬を
絶妙な語り口で浮きぼりにした、三十幾通りの人生ドラマ。
追悼の思いを持ちながら、久しぶりに頁を開いてみる。
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