2002年8月7日記 岸 和幸
敬愛する星野道夫さんがカムチャッカで亡くなってから、
昨年で早10年。
彼の遺した表現物に共鳴する輪がますます大きくなり、深い感動を持つ方たちが増えています。
10年というメモリアルに、私なりの追悼の意味を込めて、
足跡を辿る旅の思い出をまとめた記録を以下に転記します。
敬愛する星野道夫さんが亡くなってから5年後の2001年、
12月冬のアラスカ各地を新婚旅行で妻と巡りました。
各地を周り目に見えない大きな力に守っていただきながら、
道夫さんとのつながりを持つ方たちと邂逅できた、人生の記憶
に深く残る旅。数年前に亡くなったクリンギット族の長老エスター・シェイさん、
息子のウィリー・ジャクソンさん、神話の語り部ボブ・サムさん、・・・。
道夫さんと魂の縁ある方たちと出逢えた、決して偶然とは思えない力に導かれた旅。
(本手記は、道夫さん由縁の団体「オーロラクラブ」Aurora Times"第8号に掲載)
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人生の挫折とそこからの再起、ちょうどその時期に出会った星野道夫さん。
彼の写真と文章、そこに映し出されていたのは、遥か遠いアラスカの
人生の挫折とそこからの再起、ちょうどその時期に出会った星野道夫さん。
彼の写真と文章、そこに映し出されていたのは、遥か遠いアラスカの
大自然だった。
遥か遠くにあって厳しい寒さを持つアラスカという土地が、
とても身近に暖かな世界であるように感じられた。
なんて優しい人なのだろう、ミチオさん(旅で出会った彼の友人達は皆親しみをこめてミチオと呼んでいた)
の世界に深く魅せられた私は、その後アラスカを初めて訪れた。
一度目のアラスカの旅を終えた頃から、ミチオさんの言っていた
ある言葉が強く心に残っていった。
「人間には二つの大切な自然がある。日々の暮らしの中で関わる身近な自然、
そしてもう一つは、なかなか行くことのできない遠い自然である。
が、遠い自然は、心の中で想うだけでもいい。
そこにあるというだけで、何かを想像し、気持ちが豊かになってくる。」
現在、私は自然環境を守る仕事に携わっている。
世界の森林生態系の保全と再生に取り組んだり、日本各地にある身近な自然と
世界の森林生態系の保全と再生に取り組んだり、日本各地にある身近な自然と
その文化が荒廃している中、再生に動いているところだ。
里山に入りながら、時おり遠く離れたアラスカのことを思いだす。深い森が広がり、クマがいて鯨がいてカリブーの群れが移動を続けている
静と動の世界。
様々な生きものたちがそれぞれの時間を精いっぱいに生きている姿が想像できる。そのことを想像するだけで、暖かで豊かな気持ちになれる。
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