ケチカンに戻ると、ウイリーが港で待っていてくれた。
再会したばかりの私たちに、彼はいきなり一つの話を始めた。
「ミチオは君達の旅をずっと始めから見守っていたのだよ」
再会したばかりの私たちに、彼はいきなり一つの話を始めた。
「ミチオは君達の旅をずっと始めから見守っていたのだよ」
そう言うと、古くからクマの一族に伝わるという話をはじめた。
何か別の世界に運ばれるような不思議で敬虔な気持ちになる物語。
翌日、ウイリーはクマの一族の聖地クランハウスへ私たちを
連れて行ってくれた。
クランハウスを取り囲み、イーグルや動物達のトーテムポールが並んでいる。
すると森の上空から一羽のハクトウワシが飛んできて、ゆったりと
舞い始めた。
あまりの光景に妻と感激していると、ウイリーとエスターさんがにっこりほほえんでいた。
もう一つのクランハウスに向かうと、建物の前方には海が広がり、
穏やかな波が繰り返し流れていた。
「今、目の前にあるこの波は、 遥か遠く日本の黒潮が運んで
きたものだ。 私達は見ようとさえ思えば、離れていても
この先にある日本を感じることができるのだよ」
ミチオさんの足跡をたどるという私たちの旅は、
ここに無事終えることができた。
黒潮に運ばれて、長い旅をしてきたであろう海の水は、
それほど冷たくは感じられなかった。
ウイリーに導かれて、顔と手を清め、三人で静かに祈りを捧げた。旅の終わりをミチオさんに感謝して。
そして今、こうして原稿を書いている私の側には、
素晴らしい旅を共にした妻がおり、そのお腹には大事な生命が
宿っている。
再生の出発点を歩み始めたばかりで、何もできていなかった
私もようやく少しずつ人生の意義と喜びを強く感じ、
歩み始めている。
まわったこの旅は、多くの方に支えられてこそできた旅だった。
折りある毎に旅のアドバイスをくださった新開さん、
現地の情報を教えていただいた赤坂さん、暖かく出迎えてくれた
エスター、ウイリー、ボブ、メアリー、多くの方に感謝している。
そしてこの旅を静かにやさしく見守ってくれていたミチオさんの魂に深い感謝を捧げる。
0コメント