「たとえ、どんなにそれが小さかろうと、
僕らが、自分たちの役割を認識した時、
はじめて僕らは、幸福になりうる。
その時はじめて、僕らは平和に生き、
平和に死ぬことができる。
なぜかというに、生命に意味を与えるものは、
また死にも意味を与えるはずだから。」
また死にも意味を与えるはずだから。」
(サン=テグジュぺリ)
暑さの中、わずかながらでも雨が降ると、ホッとした
気持になるのは人間ばかりでなく、命を保つのに
水が欠かせない植物であればなおさらのことでしょう。
今夏はより同情の気持ちになりました。
日本の都心はあちこちにビルが乱立し、木陰どころか
日陰すらもあまりない状況で、まさしく”東京砂漠”。
地下道があれば逃げ込みたくなります・・
「機械は人間を偉大なる自然の問題から
分離させないだろう。
むしろさらに深刻な問題で人間を悩ませるであろう」
ふと「サン=テグジュぺリ」の言葉を思い出しました。
彼が職業飛行の最中、リビアの砂漠のまっただ中で
不時着遭難し、一滴の水もなしに3日間歩きつづけた
という話。
彼は、「星の王子さま」の作者として世界中で有名
ですが、一方で、職業飛行家でもありました。
1900年6月29日フランスのリオン市に生まれ、
1944年7月31日、フランス解放戦争に従軍中、
地中海のコルシカ島の基地から単機で偵察を
目的に 単身ライトニング機に搭乗、消息を絶つ。
ナチスの戦闘機隊と遭遇し、多勢に無勢、
撃墜されたものと信じられている。
「ぼくら人間について、大地が、万巻の書より多く
を教える。 理由は、大地が人間に抵抗するがためだ。
人間というのは、障害物に対して戦う場合に、
はじめて実力を発揮するものなのだ。
もっとも障害物を征服するには、人間に、道具が
必要だ。
人間には、鉋は必要だったり、鋤が必要だったりする。
農夫は、耕作している間に、いつか少しづつ自然の
秘密を探っている結果になるのだが、こうして
引き出したものであればこそ、はじめてその真実
その本然が、世界共通のものたりうるわけだ。
これと同じように、定期航空の道具、飛行機が、
人間を昔からのあらゆる未解決問題の解決に
参加させる結果になる。」
15年間飛行家として日々を過ごす中で、砂漠の
不時着以外にもいくつもの困難に遭遇し、
その度に自身の持つ強靭な意志で打ち勝ったそうです。
飛行家という職業を通して大自然と接触しながら、
自我を深く掘り下げ、人間の真実の発見に
努めていったことでしょう。
「ぼくは、アルゼンチンにおける自分の最初の夜間飛行
の晩の景観を、いま目のあたりに見る心地がする。
それは、星かげのように、平野のそこここに、
ともしびばかりが輝く暗夜だった。
あのともしびの一つ一つは、見渡すかぎり一面の
大海原の中にも、なお人間の心という奇跡が存在する
ことを示していた。
あの一軒では、読書したり、思索したり、打明け話を
したり、この一軒では、空間の計測を試みたり、
アンドロメダの星雲に関する計算に没頭しているかも
しれなかった。
またかしこの家では、人は愛しているかもしれなかった。
それぞれの糧を求めて、それらのともしびは、
山野の間にぽつりぽつりと光っていた。
中には、詩人の、教師の、大工さんのともしびと思しい、
いともつつましやかなのも認められた。
しかしまた他方、これらの生きた星々のあいだにまじって、
閉ざされた窓々、消えた星々、眠る人々がなんと
おびただしく存在することだろう・・・
努めなければならないのは、自分を完成することだ。
試みなければならないのは、山野の間にぽつりぽつり
と光っているあのともしびたちと、心を通じ合うことだ。
たとえ、どんなにそれが小さかろうと、ぼくらが自分達
の役割を認識したとき、はじめてぼくらは、幸福になるうる。
そのときはじめて、ぼくらは平和に生き、平和に死ぬ
ことができる。
なぜかというに、生命に意味を与えるものは、
また死にも意味を与えるはずだから。
”精神の風が、粘土の上を吹いてこそ、 はじめて
人間は創られる。”」
自分の生まれてきた意味を知り、己が果たすべき役割を
果たしていくこと、それこそが大事であるとサン=テグジュぺリ
は教えてくれます。
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