「目を覚ましなさい。
人間どんな人でも一隅を照らそうという思いで
一途に取り組んでいけば10年、20年その先に
成し遂げられるものがあるのだ」
人間どんな人でも一隅を照らそうという思いで
一途に取り組んでいけば10年、20年その先に
成し遂げられるものがあるのだ」
先日の照隅会「神渡良平 人間学」。
終了後の懇親会で神渡良平先生を囲み、
参加者の方たちと語らい合っていた時のこと。
「先生の書かれた本を読むと、難しい言葉を
使っていないのに重みを感じます」と、
ある方が言いました。
周りの方たちもそう、そうと深く肯いていました。
先生が表す「言葉の重み」を、多くの方が
同様に感じられていることと思います。
たしかにその言葉には、人を元気づけ、
勇気づけ、励ます力があり、
読む者、聴く者にとっては数倍、数十倍もの
希望を伴って響いていることでしょう。
苦悩の深さ、葛藤の複雑さを持ち、人生の挫折に
打ちひしがれた人間にとって、神渡先生が発する
言葉は、大きな力となって生きる勇気を与えてくれます。
篠浦伸禎氏(東京都立駒込病院・脳神経外科部長)は、
神経疾患の患者に臨床で、神渡先生の著書
「安岡正篤 人間学」 の本を手渡したところ、
薬よりも効果が認められたといいます。
そこから始まった研究でわかったことは、「人間学」の
教えを実践することは究極の「脳トレ」であるということ。
いかに人間らしく生きるかを考えた「人間学」を
学ぶことで、私心にとらわれることのない「公」を
考えることが脳に新しい回路を開き、「志」を持つことで
ストレスを乗り越える脳を作るといいます。
神渡先生はご自身が38歳の時、脳梗塞で倒れる
体験をされました。
それまで編集の仕事をしている中で、出世したい、
もっと陽の当たる仕事がしたい、というまさに
「俺が」の世界にいたそうです。
ところが倒れてしまい、3日間は意識がなく、
4日目に目を覚ましました。
担当の先生からは、左側の脳がやられており
「うまくいかなければ、車椅子の生活になる事も
覚悟して下さい」と言われます。
仕事が面白くてたまらない38歳には大変辛い宣告。
俺は人生に失敗したと落ち込んだそうです。
先生の奥様は励まそうとして、ありとあらゆる本を
持ってきてくれました。
その中に、歴代首相・主要財界人の知恵袋、
東洋思想の第一人者として名高い
安岡正篤先生の言葉がありました。
「水棲(すいせい)虫のような人生を送ってはならない」
”目を覚ましなさい。
人間どんな人でも一隅を照らそうという思いで
一途に取り組んでいけば10年、20年その先に
成し遂げられるものがあるのだ”
先生は大きな気づきを得て、自分の足元から
一隅を照らす人になろうと決意されます。
懸命のリハリビを行い、その結果、周囲が驚く早さで退院。
しかし退院する際に先生からこう言われます。
「5年以内で再発すれば、ほぼ間違いなくあの世行きです」
残された時間は5年。
先生はそう解釈します。
”5年の間で、自分は何を学んだのか、人生を渡る秘訣
は何なのかを明らかにしよう。”
安岡正篤先生の伝記を執筆する事を決意されます。
4年半かかって書き上げた作品。
処女作「安岡正篤の世界」が完成します。
しかし、作品を出版社に持ち込んでも
読んでもらえなかったそうです。
神田の同文館が、やっと受けてくれますが
広告の費用はありませんでした。
本を読んだ方が感動し、その輪が徐々に
拡がる中で、第一版、第二版・・・・
とついにはベストセラーになります。
神渡先生はこの時の経験を、
「碎啄同機(そったくどうき)」という言葉で
表しています。
”ひよこの雛は卵の内から、コツコツとつつく。
親が外からコツコツとつつき、孵化する。
自分の内部にこのままではいけないと
問題意識を持つからこそ、
「一隅を照らす」という言葉に惹かれたのだ。
天は私に脳梗塞という逆境を与えて
この本を書かせたのだ。”
障害や病気、など困難な出来事という外的
な要因にも負けず、それを乗り越えて
自分の人生を主体的に受け止めた時、
はじめて自分の人生は輝いていく。
「人は何によって輝くのか」という先生の本
の題名には、そのことがよく現されています。
さて神渡先生に多大な応援をいただいている
人間学の勉強会、「照隅会」。
「一隅を照らす」から名付けていただいた
大変有り難い名前です。
2012年5月に、記念すべき「こころの生態系づくり」
第一回を開催しました。
講演の場で、先生はニューヨーク州立大病院
に掲げられているある患者さんの詩を
紹介されました。
「神の慮り(おもんばかり)」
”大きなことを成し遂げるために
力を与えてほしいと、神に求めたのに
謙遜を学ぶようにと、弱さを授かった
より偉大なことができるようにと
健康を求めたのに
よりよきことができるようにと
病弱を与えられた
幸せになろうとして、富を求めたのに
賢明であるようにと、貧困を授かった
世の人々の称賛を得ようとして
成功を求めたのに
得意にならないようにと失敗を授かった
人生を享楽しようとあらゆるものを
求めたのにあらゆることを喜べるようにと
いのちを授かった
求めたものは1つとして与えられなかった
が願いはすべて聞き届けられた
神の意に添わぬ者であるにもかかわらず
心の中で言い表せないものは
すべて叶えられた
私はあらゆる人の中で最も豊かに
祝福されたのだ”
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