『対岸の火事では決してないウクライナ情勢』

第一次大戦から100年にあたる今年、世界を揺るがし
かねないウクライナの情勢。

プーチン大統領
はクレムリンで演説し、クリミア半島
をロシアに編入
する考えを公式に表明しました。
ロシアが同半島を編入すれば、第2次世界大戦後の
欧州で初めて武力を背景にした「併合」の事例
となります。


ロシアは住民の「自決権」を認めた国連憲章に従って
合法性を主張
していますが、欧米は戦後秩序を形成
してきた「領土保全」の原則が侵害
されたと強く批判。

欧米は追加制裁に踏み切ることを決め、17日にクリミア
編入に関与したロシア高官らの資産凍結とビザ発給
停止
など、新たな制裁措置をとることとしていますが、
貿易制限の導入など一段と踏み込んだ制裁の検討
にも入っています。

今年6月にロシア南部で開かれる予定のG8首脳会議
もボイコットすることが確実
で、ロシア議会も対抗措置
を検討すると表明しました。

G8からのロシアの追放に至れば、冷戦終焉後の大きな
国際協調の枠組みは失われる
ことになります。

また欧米が編入を阻止できなかったという事実は、
ロシアを含む主要国(G8)が国際法や主権の「番人」と
して存在してきた冷戦後の基本的な国際秩序が
揺らいだ
ことを意味します。

シリア内戦や北朝鮮、イランの核問題
など、米ロを含む
多国間の枠組みで解決を目指してきた課題にも悪影響
が及ぶことの懸念が生じました。

世界有数の資源国であるロシアへの追加制裁の発動
は、原油やガスの国際的需給や日欧米の企業による
対ロ投資に悪影響
を及ぼす可能性もあります。


ロシアの輸出は欧州向けが半分
を占め、ロシア経済が
打撃を受けるのも確実。1400億ドル(約14兆円)の対外債務
を抱えるウクライナのデフォルト(債務不履行)の危機

続きます。

状況が悪い方に転がれば、ロシアとウクライナとの軍事
紛争、米欧による強力な対露制裁
といったシナリオも
考えられます。

しかし、米欧露には第一次大戦の悪夢の記憶が強いこと
から、今年に限っては そうした軍事紛争を回避しようという
強い圧力がかかるのではないかと専門家はいいます。

そもそもロシアはなぜここまでクリミアを含めたウクライナに、
こだわる
のでしょうか?

それはこの場所が、ロシアにとって死活的とも言える重要性を
持つからです。産業面では、ウクライナの航空宇宙産業は
ロシアと深いつながり
を持っており、経済面では対欧州ガス
輸出用の主力パイプライン
が通っています。 

 
















また、クリミアに駐留する黒海艦隊は、ロシアの海運のおよそ
30%が通過する黒海の制海権確保
と共に、シリア情勢など
に睨みをきかせるためロシアが地中海に展開している艦隊
を支えるロジスティクス拠点
なのです。

「プーチンの次の一手はドネツク」
という声も聞かれてきました。
ドネツクはウクライナ東部のロシアに近い位置にあり、人口
百万人以上をかかえるウクライナ第四の都市。

ドネツ炭田を核とした、有力な工業地域
で所得水準は高い
といわれています。アゾフ海を挟んで、クリミアとドネツク州が
海岸づたいに位置し、実質的に黒海に面している場所。

ロシア側から見れば、クリミア半島は地政学的要衝ですが、
ドネツクは経済的な要衝
となるのです。 

このように今後はウクライナ東部が焦点となることでしょう。
ロシアとの対立構造が固定化され、中東も不安定化
すれば、オバマ政権はアジア重視戦略の見直しも
迫られかねない
と予測されています。

プーチン大統領は、圧倒的な支持率
を背景に、
瀬戸際政策というリスクをとることができるといいます。

片や、オバマ大統領は支持率が下落基調の中で、
シリアに次いでプーチンに「一本とられる」ことだけは
避けたいと考えていることでしょう。

奇しくも、史上初の世界恐慌は、クリミア半島に端を
発する
ものでした。1853年オスマン帝国・イギリス・
フランス連合軍とロシアの間で、クリミア戦争

勃発した際、穀物価格が急騰。

しかし3年後の戦争終結とともに急落し、世界市場は
大混乱
に陥ったのです。

160年後の現在、世界経済ははるかに緻密
になり、
ドミノはびっしりと全世界に張り巡らされている状態。

ウクライナから遠く8000㎞離れた日本とて、その例外
ではありません
ウクライナ情勢は日本や東南アジア
諸国にとり、「対岸の火事」ではありません


今回の欧米露のやりとりを注視しているであろう中国
は、アジアで領有権の拡大を図ろう
とする中で、
「米国に挑むリスクは低い」と判断するようなことに
なれば大変危険。

世界経済における中国の影響力
は、ロシアの比では
なく、仮に中国が東シナ海などで軍事力を行使した
場合、経済制裁を含めオバマ政権の対応が行き詰まる
ことは、目に見えています。
各国の一挙手一投足から目が離せません。


”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”