『雪害をバネとする農業に』

気候変動の影響と思われる自然災害
その規模は、年々大きくなってきているように感じられます。

先月、関東地方を中心に降った記録的な大雪で、農業関係
の施設がつぶされ、多くの作物が雪に埋もれ、家畜が寒さ
にさらされ
ました。


全国一の生産量を誇る栃木県のイチゴは温室がつぶれ、
日本一のブドウ産地を抱える山梨県でも施設が損壊し、
樹体が雪に埋もれ
ました。

牛舎や鶏舎も各地でつぶれ、福島県では山菜栽培の
ハウスが壊れ
ました。

埼玉、群馬、栃木県の農業被害額
は、台風などによる
過去の自然災害の被害を上回り、過去最悪の水準
あることが分かりました。

被害額は、埼玉県が229億円で、群馬、栃木と合わせた
3県では少なくとも441億円
に上るそうです。

首都圏向けに野菜や果物を生産する埼玉県は、キュウリ
やイチゴなどの作物の被害額が108億円。
農業ハウスや畜舎などの施設が121億円

深谷市本庄市などの被害が特に大きいといいます。

群馬県は140億円規模
になる見通しで、ハウスや豚舎、
牛舎の倒壊が相次いだもの。
交通網のまひで出荷できず捨てられた牛乳も多かった
そうで、被害状況の把握ができていない地域もあり、
被害額はさらに増える可能性があります。

栃木県は72億円

農産物では出荷の最盛期を迎えたイチゴの被害額が
最も大きいそうです。

また山梨県は最低でも約71億円で、ブドウやモモの
ハウス栽培に大きな被害
が出ているそう。


雪害により、全国で農業用のハウスが壊れる被害が
約1万4500件、ぶどうなどの農作物の被害が約980ha
に上りました。

様々に被害を受けた方たちの中で、最大の被害者は、モモやブドウ、
ナシといった木になる果物を作る農家ではないか
と言われています。

雪の重みで枝が折れてしまう被害が多発しており、今年は収穫できる
のか?できたとしても量が少ないのではないか?

関係する皆さんはさぞかし心配されていることでしょう。

木の再生には長い時間がかかる
といい、今後5年程度は品不足になる
可能性があります。
もしかしたら、ブドウ不足でワインの生産にも影響が出るかもしれません。

有数のぶどう産地、甲州市や山梨市などで被害を受けた農業用
ハウスのうち、再建を考えているのは3割余り
にとどまっていると
ききます。

あまりにも被害が甚大すぎて、7割近くがまだ再建の見通しが
立ってないか、再建を断念する考え
であるそうです。

農水省は、大雪で被害が出た農家に対して、雪で倒壊した農業用
ハウスの再建、補修費用の助成や、被災農家に貸し出す日本政策
金融公庫の融資を5年間無利子とする支援
を行うことを決めました。
果樹の植え替えなどの費用も助成するそうです。

しかし、高齢化が進む農家の間からは「農業をやめたい」といった
が各県の農業被害相談窓口に寄せられているそうです。
営農者の打ちひしがれた心を支えることもまた大事なこと

「数字の中には農家の心情が表れない。
専業の大規模経営の被害額は大きく、大規模経営には大規模経営
なりの経営者の悩みがある。
反対に額は小さくても、小さい経営には小さい経営なりの思い入れが
ある。

記録的な雪害に直面した時、生産者の営農意欲が一気に失せてしまう
のではないかと危惧する。

被害が大きかった専業経営農家は、今後の立て直しに必要な巨額の
資金と時間を考えると、打ちひしがれる思いだろう。

山間地の新規作物として山菜を温室で作り始めた矢先にハウスが
壊れてしまった高齢農家は、被害額自体は小さくても、これから営農を
続けてくれるだろうか。

農水省は大雪被害に関する緊急災害対策本部を設置し、農業者への
支援策を打ち出した。
ここには初めて、壊れたハウスの撤去の補助を盛り込んだ。

こうした助成策には、農家の営農意欲を支える効果が期待できるだろう。

迅速な対応と確固たる策は復旧に向けて農家の経営面だけでなく、
心理面からも必要だ。 

営農意欲を支えるのは施策と助成額だけではない。 
個々の被災者の心に深く入って支えていけるのは、普及員やJA営農
指導員も含めた周囲の人の対応だ。 

被災直後はまだ気が動転している。
落ち着き、冷静に被害を 見るようになった時、被災者の気持ちが
折れないようにするには 、周囲の支えが必要だ。

産地を立て直し、集落を維持する ためにも、営農意欲を消してはならない。」
 
(日本農業新聞 2014/3/1) 
http://www.agrinews.co.jp/modules/pico/index.php?content_id=26252

災害リスクの防止
から、国内で気候や地域の異なる場所で、畑を複数確保
する
、あるいは農家どうしでネットワークを結び、必要により協業しあう
いうことも今後の対策に必要かもしれません。

また再建にあたり、”一粒1000円のイチゴをつくるデータ農業”として有名な、
トマトとイチゴの農園を最先端技術で行っている宮城県山元町の農業生産
法人、株式会社GRA
の取り組みが参考になるかもしれません。

ここでは農水省との連携事業で参画した「先端プロ山元研究施設」にて、
タネから苗を作るまでの時間を短縮し、農薬を出来るだけ使わないようにする
為の人工光の育苗室
を作っています。

人口光を使うことで計画的な育成が可能
となったそうです。
環境はすべてコンピューターで管理されているため、市場の状態に合わせて
柔軟に生産量を調整
できるといいます。

また、農業者の知識や経験をプログラミングすることにより、農業の拡大や
若手の参入に期待
が寄せられています。
http://www.gra-inc.jp/about.html


”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”