将来に明るい希望を持てていない日本の
若者たちの現状。
政府閣議で、二つの白書が決定されました。
2014年版「子ども・若者白書」、2014年版
「自殺対策白書」
いずれも日本の若者たちの今を表したものです。
若者たちの現状。
政府閣議で、二つの白書が決定されました。
2014年版「子ども・若者白書」、2014年版
「自殺対策白書」
いずれも日本の若者たちの今を表したものです。
「子ども・若者白書」は特集として、世界7カ国の若者
の意識調査を実施しています。
「自分の将来に明るい希望を持っているか」との問い
に対して、「希望がある」「どちらかと言えば希望がある」
と答えた人は
日本61.6%(日本、米国、韓国、英国、ドイツ、フランス、
スウェーデンの7カ国中最低)で、他の6カ国(82.4~91.1%)
を大幅に下回りました。
(各国13~29歳の男女約1000人を対象としたネット調査)
「40歳になったときに幸せになっている」と答えた人は、
日本66.2%で最下位(他の6カ国は81.6~87.4%)
「自分自身に満足している」「自分には長所がある」と
答えた割合も、日本は最低。(1位は米国86%)
「子ども・若者白書」の中で、日本が1位だったのは、
「自国のために役立つことをしたい」54.5%。
ただ、「自分の参加で社会現象が少し変えられる
かもしれない」との回答は30.2%にとどまり、最下位。
一方、「自殺対策白書」では2013年の全国の自殺者数
は、前年比575人減の2万7283人となり、4年連続で減少。
但し、先進7か国(G7)中、15~34歳の若い世代で
死因の1位が自殺となっているのは日本だけでした。
自分に自信が持てず、将来についても悲観的な日本の
若者像が浮き彫りとなっています。
一方で生活の満足度は、以前より高くなっていることも
明らかになっています。
昨年、国交省による2012年度「国土交通白書」によれば、
「今後の収入や資産の見通し」について不安を抱えている人
は、全体では28.5%で、30代だけでは39%、20代は32.1%
の人が将来を不安に思っています。
しかも完全失業率を見れば、
20〜24歳では1970年には2.0%だった失業率が
2012年には7.9%に上昇、2013年3月に実施した
国民意識調査では、10年後の社会は「不安がある社会」
「暗い社会」などと答えた割合が、20~30代は他の世代
に比べて最も高く、39.6%の人が将来を憂いていることが
わかりました。
「国民生活に関する世論調査」によれば、現在の生活
に「満足している」又は「まあ満足している」と回答した
割合は、他の年齢層に比べ、20代・30代の若者では
上昇傾向にありました。
1977年の満足度を100とした場合、2012年の20代の
満足度は121、30代は112でほかのどの世代よりも高く、
2012年はこの30年間で最高の水準となっています。
国交省はこれについて、現在の若者が生まれ育った
環境は、これまでの世代と比較して、スマートフォンや
タブレット端末など新たな製品が登場し、消費財の種類
や品質、その普及度など物質的な豊かさが向上し続けて
いることが影響して、若者の生活満足度が上昇している
のではと説明しています。
ちなみに、50~70代では1977年よりも生活満足度が
低下。一番お金を自由に使えると言われている世代が
幸せを感じていない状況。
果たして幸せとは一体何でしょうか?
ノンフィクション作家の柳田邦男さんは、人生は
うまくいかなくてもともとであり、人間にはもともと
いろんな苦しみがあると言います。
「それにつきまとわれない人生があったら、
それは例外だと思います。
つらいこと、苦しいこと、大変なこと、孤独を
感じること、それらがなかったら、むしろそっちの
ほうが、アブノーマルじゃないかとさえ思います。
世の中を見ると立派な家屋やマンションに、
家族が幸せそうに暮らしているように見えますが、
屋根の下の現実は、すべてがうまくいっている
家族は、おそらくほとんどないんじゃないかな。
みんな、いろんな問題や悩みを抱えている。
子どもが問題を抱えていたり、親が問題を
抱えていたり。
病気、障害、心の問題、経済的困窮、子どもの
引きこもり、家族の不和、財産争い、実に多様です。
人生のデコボコ、あるいはハリネズミに刺される
ような状況は、人間が生きていく過程では
避けられないことだと思います。
生きるというのは、それらを受け入れながら自分を
見つめ、自分自身がよりよく生きていく道を探すり
ほかはないでしょう。
その探すということは、おそらくつらいことでしょう。
自分で自分の道を見つける。
これくらい大変で、しかもつらいことはない。
そのつらさを引き受ける、それこそが人生だと
思うんですね。」
自己実現、自己中心、自己責任。
人とのつながりが薄くなっている時代の中で、
柳田さんは子どもの心の発達に問題がある
といいます。
「一人の人間が生まれて育ち、社会人になって、
やがて一生を閉じる。
そのサイクルの中で一番大事なのは、
乳幼児から少年時代にかけての心の形成、
心の発達の問題です。
お互いの心を理解し合い、人とつながり合っていく、
そういうところが大事ですが、そこが危なくなって
きているのが現代社会。
その間題意識は、私自身がずっと事件や災害、
事故で書いてきた流れの中で必然的に
つながっていくんです。
事件の話はその分野で、子どもの話はその分野で
という話ではなく、さまざまな物事は根底において
つながっているんです。
21世紀になると、負の側面は、現代技術のハイテク
の分野に広がってきたのですが、それらは目には
見えにくいというやっかいなものになっている。
それは何かといえば、ケータイ、スマホ、パソコン、
ゲーム、テレビといった、メディア社会、あるいは
情報社会の中で進行している子どもや若者の心
のゆがみです。
便利で、簡単で、安く買えて、楽しい。
ケータイはスマホなどの映像機器に発展し、
音楽が聴けるし、映画も見られる。
友達と会話もできれば、メールで1日に50人ぐらい
の人と簡単にやりとりもできる。
居ながらにしてなんでもできる。
私はケータイを持つことを否定はしません。
しないけれども、それに浸りきると、失うものが
あることに気づかなければいけない。
人間は、便利なものに弱いんです。
また、依存していきます。
特に中学生や高校生の女の子は、24時間ケータイ
が手放せないという依存症が多くなっています。
男子も多い。
深夜でもブルブルと音が鳴るとぱっと目を覚まし、
メールをチェックする。
1時間以内に返信をしないと、プッツンされちゃう
から。
常に強迫心があって。お風呂に入る時もケータイ
を気にして、寝る時も常に側に置いておく。
知り合いの人の娘さんが高校生で、24時間ケータイ
から手が離せないほど、ケータイ依存の傾向が
あまりにもひどいことを聞きました。」
人生はうまくいかなくてもともと。
生きていると、いろんな苦しみ、悲しみがある。
それにつきまとわれない人生があったら、
例外だと思います。
その苦しみや悲しみを自分の力で乗り越えて
こそ、幸せの実感が持てるのではないでしょうか。
飽食に囲まれ、物の豊かに溢れた中で、
成長する日本の子どもたち。
冒頭に紹介した二つの白書から映し出される、
その姿に私たち大人はどのように向き合うのか、
それとも無関心でいるのか。
さまざまな物事は根底においてつながっている
中で、自分自身の生き方が問われています。
“ 今求められているもの、それは価値観の
転換であり心の持ち方の転換だ。
それ以外の何ものでもない。
そのことに「気づく」必要がある ”
(柳田邦男)
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