「知を活かす知」

『イノベーションとは、全く新しい産業を創り出し、
古い産業に取って代わることだ。

もし、本気でイノベーションを起こせば、ここに
おられる誰かの会社をつぶすことになるかも
しれない。そのお覚悟はあるのですか?』



2014年7月に行われた経団連夏季フォーラム
テーマは、「イノベーション」

講師に招かれた、産学連携推進機構理事長の
妹尾堅一郎さん
は講演で、世の中で使われている
「イノベーション」という言葉そのものを否定


この言葉に納得がいかない顔つきの大企業経営者
である参加者たちに対して、次の言葉でさらに
たたみかけると、参加者は固唾をのんだといいます。

『新聞はイノベーションを「技術革新」と訳して
いるが、これは一面しか表していない。

中国の言葉である「創新」のほうがぴったりくる。

技術起点型のイノベーションで、古典的なビジネス
モデルを続けていては、世界では勝てない。

日本の大手企業が取り組んでいるのは、あくまで
現状の技術やビジネスの仕組みを改善する
「インプルーブメント」であって、「創新」ではない。』



妹尾さんによれば、日本企業の問題は、
「技術力で勝る日本が、事業で“負け続ける”」
という現状。

その理由として、日本の企業が80年代で成功を
収めたモデル
をあまりに信奉し続け、そのモデル
を超えるリスクを
とろうとしなかった。

『なまじ製品技術や製造技術に自信があるから、
商品形態(アーキテクチャ)や事業形態(ビジネス
モデル)の工夫をしてこなかったのが、ここへきて
ようやく最近考えざるを得なくなったということです。

ソニーやシャープだけでなく、東芝、日立も事業別
で見れば、家電関係は危ない。
逆にソニーでも勝っている分野もある。

企業全体で見るだけでなく、事業構造で見ないと
間違えます。』
 

日本は、「技術に」しか知恵をつかっていないが、
「技術を活かす知恵」を開発することに知恵をつかう
ことが大事であると妹尾さんは言います。

すなわち、「知を活かす知」

「技術という知を活かす、ビジネスモデルや知財
マネジメントという知」
という意味。

海外企業は技術では多少劣っても、ビジネスモデル
や知財マネジメントを工夫
して勝ってきました。

 













「iPod はiTunesStore と一緒になって、サービス・
レイヤーとモノ・レイヤーで価値形成してきた。

2011年6 月スティーブ・ジョブズの最後のプレゼンで、
彼はパソコンのレイヤーからiCloudへのレイヤーへ
重心を移行させると宣言した。

クラウドというサービス・レイヤーが一気に加速された
わけです。

これがアップルの複合、複層的価値形成モデルの
全体像です。

こういう産業の価値形成の全体像の透視図が、
シャープやソニーなど日本の製造業に作れなかった
ということです。

また、アップルはこのモデルを垂直統合で作りました
が、彼らの最大の競争力は40数万種類のアプリ
ケーション。これらは彼らがつくったものではなく、
サードパーティが作ったもの。

そのWin-Winの関係を可能にしたのが
「内部オープン」。

すなわち、自分の生態系の中にオープン領域を
作り、そこに外部を引き込んで競争力を
生み出した。」



妹尾さんによれば、アップルのやり方に、
マイクロソフトやグーグルが近づいてきて、
似たような動きを始めたといいます。

つまり、垂直統合とオープン&クローズの組合せ

こうした複合的なやり方同士の戦いになってきて
おり、アップルが変えたのではなく、外側の企業
がアップルを真似て
きているそうです。

マイクロソフト、グーグル、インテル
などが、自分たち
得意な領域から垂直統合と複合的な生態系づくり
を始めている状況。

それに対して冒頭に紹介した経団連セミナーでは、
Q&Aセッションで「どうすれば、イノベーションを描ける
人材を育成できるのか」
など、戦略の実行をどんどん
進む海外先進企業との周回差
があまりにも
はっきりしていることに暗澹たる思いです。

産業生態系が様変わり
している現在、業種の
垣根を超えた企業競争


電子機器、機械の後、医療機器や機能性素材、
食品に至るまで
同様の動きが見えています。

そのことを理解して、俯瞰的、長期的な手
打たないと負け続ける、乱世の今。

次世代の構想
を描いたものが経済で勝利を
得るという、妹尾さん。

今後のビジネスを展望し、いかに行動するかに
とても参考になる考え方です。


”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”