『揺れるグレート・ブリテン』

英国からの「独立」の是非を問う英北部スコットランド
の住民投票日が迫っています。

スコットランドでは投票日が迫る中、独立賛成派と
反対派による議論
が沸騰中。


1年前は反対派が多数
を占め、まだ夢物語の感
が強かったスコットランドの分離独立運動ですが
、投票日を1週間後に控えた世論調査では、
僅かながら独立賛成派が反対派を上回った
ききます。

ここに来て、スコットランドという新しい国が誕生
する可能性が、俄然現実味を帯びてきています。

独立を目指すスコットランド行政府
は、独立した
場合も英女王を元首とする体制を維持する方針を
打ち出しています。

スコットランドの人口約520万人全体の約8.5%
占め、GDPも約8%にのぼります。経済的に「北海
油田」は大部分をスコットランドが領有
するのに、
その利益を英国が吸い上げているという不満があり
ます

(逆に、北海油田があるがゆえに、スコットランド
は独立してもやっていける
との主張)。


欧州最大の埋蔵量
と言われる北海油田を支配下
に置くことで、独立すれば1人当たりの所得が
年1000ポンド(約17万円)増える
との主張も
あります。

賛成派は、北海油田の資源をもとに経済的自立が
可能としていますが、反対派の人々は「経済的リスク
が大きすぎる」
と大きな懸念を示しています。

英国では「独立」に備え、通貨や金融、安全保障、
法律などさまざまな分野で対抗措置
が検討され
始めています。

英国の正式名称は「グレート・ブリテン及び北部
アイルランド連合王国(the United Kingdom of
Great Britain and Northern Ireland)」
で、
略称はUK

英国の国名には、民族を意味する言葉がひとつも
入っていません。

大ブリテン島(グレート・ブリテン)の主要民族
は、
イングランド人、ウエールズ人、スコットランド人
ですが、グレート・ブリテン人という民族はいない
のです。

また、アイルランド人という民族はいますが、北部
アイルランド人という独自民族は存在しません。

主にケルト民族から成るスコットランドでは、
アングロサクソン民族のイギリスに支配されてきた
との思いが根強くあります。

ケルト人はインド・ヨーロッパ言語を話す民族で、
紀元前8世紀頃から東はドナウ川から西はフランス
の大西洋岸まで主として中部ヨーロッパに大きな
勢力
を張っていました。


ヨーロッパで最初に鉄器を造り、ギリシャ・ローマ
文化と異なる独自の文化を持っていたケルトの
人々


紀元前6世紀頃には多くのケルト人がブリテン島
やアイルランドに移住


ケルトは紀元前400年頃にはローマも脅かす存在
でしたが、 その後ゲルマンやローマによって西方
へ追いやられ
ます。

ケルトには多くの部族があり、スコットランドに
居住したのはスコット人、ピクト人、ブリトン人

 

国家に民族を意味する名称が入っていないのは、
バチカン市国と英国だけ。その意味で、英国は
近代的な国民国家とは異なった原理で築されて
いる国家


女王(王)に対する忠誠を軸に、いくつかの地域が
連合して国家を形成
しています。

スコットランドは18世紀後半からの産業革命以降、
造船などの重工業が栄え、戦後はイギリス労働党
の「ゆりかごから墓場まで」で知られる手厚い
社会保障の恩恵
にも浴してきました。


しかし、1979年に誕生したサッチャー保守政権に
よる国営企業の民営化
で、スコットランド経済を
支えた造船、鉄鋼など重厚長大産業は壊滅的
打撃
を受けます。

失業者があふれ北欧諸国のような高福祉政策を
求める声
が高まりました。

スコットランドは1999年に約300年ぶりに独自の
議会を復活
させ、大幅に自治権の拡大を勝ち取る
など、イギリスからは徐々に距離を置き始めて
きました。

その後、独立を問う住民投票の実施を公約した
スコットランド国民党(SNP)が、スコットランド議会
で過半数を獲得。

イギリス政府も住民投票を認めたために、いよいよ
独立を問う住民投票
が現実のものとなったのです。

ヨーロッパがEUによって統合
される中、スコットランド
は既にEUにオブザーバーとして参加するほか、英国
政府の頭越しに、EUから産業育成や地域活性化の
補助金
を受け取っているといいます。

スコットランドの独立には、EUという、イギリスという
一国家よりも大きな枠組みの存在が前提にあり、
独立後、EUに加盟すれば、独立前とそう変わらない
日常が送れるのではないか
という見込みと期待が
スコットランドにはあるそうです。

欧州では近年、中央政府からの独立・分離を目指す
地域
の動きが活発化しています。

EU内にはスコットランドの他にも、スペインの
カタルーニャ地方やバスク地方、ベルギーは
南部と北部など
、国家からの分離・独立を
要求している地域が多く存在します。

スコットランドの独立が認められ、独立国として
すんなりとEUへの加盟が認められるようなこと
があれば、そうした地域の独立の動きにも
拍車がかかる
ことは目に見えており、EUは
複雑な立場
にあります。

スコットランドの行方は英国のみならず、各地で
くすぶる独立の動きを改めてクローズアップ
する
ことになりそうです。 


”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”