『良いではなく、伸びるものを組み合わせる』

「元々、良いものでなく、伸びるもの」
茶師の前田文男さんは、膨大な種類の茶葉からこれはと判断したものを仕入れ、ブレンドする仕事に携わっており、「利き茶」の名人と呼ばれています。
「利き茶」とは、茶葉の色や形を見たり、淹れたお茶の色、香り、そして味を確かめて、茶葉の品種や産地、品質を見極めること。茶業界に身を置いてわずか2年、全国茶審査技術競技大会の全国大会に出場します。初出場でいきなり10位に入り、六段位を取得。

1997年の競技会では、それまで九段が最高位だったのが、前田さんがその最高段位を超える成績を収めたため、十段位が制定されたという伝説を持っています。

お茶は通常、一種類の茶葉だで作られるわけでなく、何種類もの茶葉を混ぜ合わせる「合組」という作業によって、目指す味と香りの茶が生み出されるといいます。

「香甘苦渋」(香り・甘さ・苦味・渋み)の調和をとり、より奥深い味わいを出して、より良いお茶を作るため、香りを利きわける感覚と、豊富な知識とによってブレンドしていくそうです。
お茶の審査の技術で日本のトップクラスになった後で、師匠である父親から「お茶が見えていない」と宣告されたといいます。その後5年、工場の現場でお茶と向き合う日々の中で、突然「これだ」と見えたそう。
「お茶が見えていない」という父親の言葉に対して、「見える」とはどういうことかと問いかけをする中で、経験を側頭葉に蓄積し、前頭葉で問いかけを続けることから生まれたものだそうです。
茶師の腕の見せ所、それはどんな茶葉を選び、どのように組み合わせるのかということ。茶葉の品質は、葉の形・色・淹れたときの水色、香り、味からなり、その全てが高いレベルのものが高品質とされ高い値段となります。
茶師の前田文男さんの言葉は、ふだん「サス学」を子どもたちに教えている私には、人にも通じること深く腑に落ちました。
参考: 「NHKのプロフェッショナル仕事の流儀」

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”