『G2時代に望まれるしなやかさ』

この春、中学に上がった息子は、
国際情勢に強い関心を持っています。

聞くと、「世界のパワーバランス」に興味
があるのだとか。



















OECD報告書の予測
によれば、今後50年
に躍進を遂げる新興経済が世界のGDPの
大部分
を占め、世界のパワーバランスは
劇的に変わる
と言われています。

「これまで私たちが慣れ親しんだパターン
とは異なる長期的経済成長を辿ることで、
各国経済の世界に占める割合は大きく変化
することになります。

現在トップに君臨する米国は、早くて2016年
にも中国に追い超され、いずれはインドにも
追い越されるでしょう。

さらに中国とインドを合わせれば、まもなく
G7全体の経済力をも追い超し、2060年には
OECD加盟国全体を追い越すことが予測
できます。

急速な高齢化が進むユーロ圏や日本といった
現在の経済大国は、若年層が人口を占める
新興経済のインドネシアやブラジルのGDP
に圧倒されることになります」

https://www.youtube.com/watch?v=fnIl212tBPk

息子は今、中国主導で設立準備が進む
国際金融機関「アジアインフラ投資銀行」
(AIIB)に
一番関心を持っているといいます。

その創設の狙いが、陸と海のシルクロードを
中心に巨大な経済圏の構築
を目指す中国の
「一帯一路」構想にあることが、メディア報道
で明らかになってきました。

経済発展に伴う人件費や物価の上昇に加え
、近年の地価高騰や通貨切り上げで、沿海部
では生産の維持が困難
になっている中国。

「世界の工場」に終止符が打たれつつある中、
この構想を前進させるしかないという背景。

これについて、日経ビジネスオンラインで
非常にわかりやすい解説が載っていました。

”表向きの設立趣旨は、2020年までに需要が
見込まれるアジアのインフラ投資額が毎年
7300億ドル(ADB推計)にのぼり、既存の世銀
やADBだけでは到底資金不足であるという
背景を踏まえ、

すでに世界第3位の対外投資国である中国の
主導で世銀やADBを補完する形の投資銀行
を設立し、アジアの発展と世界経済の活性化
に寄与しよう、ということである。

要するに、中国の過剰生産に陥っている基礎
インフラ設備製造方面、つまり橋梁、トンネル、
鉄道などのプロジェクト建設関連企業が国内
で行き詰まっているので、各国の資金を借りて
国際化を後押ししようという話である。”

(「中国主導のアジアインフラ投資銀行の行方」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20150330/279391/?rt=nocnt















中国主導のAIIBは、57カ国の創設メンバー
発足。日本はAIIBへの警戒感を露わにする
米国と歩調を合わせ、現時点では不参加
として
います。

米国は世界銀行やアジア開発銀行(ADB)重視
、AIIBのガバナンスや中国主導への反発
という
姿勢で、同盟国に対し参加しないよう要請して
いました。

しかし、英・仏・独・伊の欧州4カ国がAIIBへの
参加
を表明。

これにより、アジアの新興エコノミーの成長利益
を受け取る資格
を得ると共に、中国の「一帯一路」
構想による発展戦略への参加
も容易に。

アジアの資金を引き入れて自国のインフラ老化
の問題を解決
し、投資や雇用を引っ張り、債務
危機以来の動力を欠いた欧州経済を活性化

させるというねらいも見えます。 

政治、経済、安全保障と中国の思惑を満載
した新シルクロード構想は、アジア、欧州、
アフリカ大陸とその海洋を舞台に、大経済
圏の構成を秘めて
います。

<陸のシルクロード>
①中国-中央アジア-ロシア-バルト海を
囲む欧州
②中国-中央アジア-ペルシャ湾を囲む
西アジア
③中国-東南アジア-南アジア-インド洋

<海のシルクロード>
④中国-南シナ海-インド洋/太平洋-
欧州のルート


そして既に、多くの具体的なプロジェクトが
動き出している状況。












交通インフラ
で対象国は、陸海空を一体化した
立体的交通網
を整備。

新ユーラシアランドブリッジ計画(江蘇省の連雲
港を出発点として、西安、ウルムチ、中央アジア
、ロシアを経由して、アムステルダムまで鉄道
を建設する計画)を筆頭に、

中国・シンガポール経済回廊中国・インド・
ミャンマー経済回廊
など、「一帯一路」の基幹
ルートを形成。

また、「一帯一路」の沿線には、様々な物流
センター
が急ピッチで建設され、自由貿易区
も続々と設置。

インフラ整備を資金面から支援するため、
シルクロード基金や、アジアインフラ投資銀行
(BRICSの5ヵ国が主体となる)新開発銀行
上海協力機構開発銀行などの設立計画が、
中国主導で進められています。
 
大国化を目指す中国が、ライバル視する
米国に肩を並べる「G2」時代が到来するか?

まさしく世界のパワーバランスが激変する時代

かつて中国に繰り返し現れた巨大帝国
その直接圧力を幾度も受けながら、日本は
決して冊封下に入らなかった
という過去の
歴史を思います。

聖徳太子は、607年に小野妹子を国使と
して隋帝国へ送りました(遣隋使)


煬帝皇帝に送った手紙の始めの文章には、
こう書かれていたといいます。

「日出ずるところの天子、
 書を日没するところの天子にいたす」

 (太陽の昇る東の日本の天皇が、
 太陽が沈む西の隋国皇帝に手紙を送る意)

※日が昇る…栄える 日が沈む…おとろえる
 の意味もあり

煬帝は、この無礼な国書をみて怒り、一度は
使者との面会を断わり
ます。

しかし当時、隋は高句麗との戦争で苦しんで
おり、大和朝廷と友好を結び、高句麗を南北
から挟みうちにしようと、結局面会します。

聖徳太子の意図。
それは中国(隋)を先生として尊敬し
学ぶが、国と国との関係は対等。
中国と親分・子分関係でなく、国同士は
対等の関係である
というものでした。

日本は自立した国、独立国であることを
認めさせた、鮮やかでしなやかな外交。

「G2」時代、息子には、揺れ動く国際情勢
を掴みつつ、
聖徳太子のような知恵を
発揮できるよう研鑚を積んで
いってほしい
と願うものです。


 














”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”