「私は経済学者として半世紀を生きてきた。
そして、本来は人間の幸せに貢献するはずの経済学が、
そして、本来は人間の幸せに貢献するはずの経済学が、
実はマイナスの役割しか果たしてこなかったのでは
ないかと思うに至り、がく然とした。
経済学は、人間を考えるところから始めなければいけない。そう確信するようになった。」
2014年9月に亡くなられた経済学者、宇沢弘文氏の言葉。
”経済学に求められているのは、「価値中立的な
客観科学」を装うことではない。
むしろ「善き社会」や「よい暮らし」とは何か、
その価値判断を提供できる学問でなければならない。
経済成長ですべてを解決できなくなった今、富の公正
な分配とは何か、物質的な豊かさと異なる「真の豊かさ」
とは何かが、改めて問われている。”
(「善と悪の経済学」)
著者のトーマス・セドラチェク氏は、チェコ共和国の
経済学者。初代大統領の経済アドバイザーを務めました。
この本の中で彼は神話、哲学、宗教、経済学の文献を
渉猟しながら、21世紀の経済学の進むべき道を
示しています。
”経済学に求められているのは、「価値中立的な
客観科学」を装うことではない。むしろ「善き社会」
や「よい暮らし」とは何か、その価値判断を提供できる
学問でなければならない。
経済成長ですべてを解決できなくなった今、富の公正
な分配とは何か、物質的な豊かさと異なる「真の豊かさ」
とは何かが、改めて問われている。
その答えは、数学に求めても得られない。”
(諸富徹 京都大学・経済学教授)
(諸富徹 京都大学・経済学教授)
社会学の中でも経済学は、その歴史の中で常に
自然科学を目標にして、精緻に客観的になることを
目指し、高度に数学化され、大量の統計を扱う
実証科学として発展してきました。
よって解明し、それによって物理学が天体の運動
を解明し予測できるようになったように、
経済の動きを予測することを目標としてきたようです。「なぜ経済学者は、誰も経済危機を予測できなかったのか」
と聞いたのは、有名な話。
経済学がどんなに自然科学に近づこうとも、それは完全に自然科学にはなれないし、またそうなるべきでは
ない、と「善と悪の経済学」は主張しています。
「しかし、人間は、原子のように自然法則にしたがって
動くわけではない。天体の運行に関する予測と異なって、
経済予測がほとんど当たらないのは、人間行動の複雑性
や、その背後にある動機の多様性のため。残念ながら経済モデルは、これらすべてを記述し尽くす
ことに成功していない。」
経済学の祖と呼ばれるアダム・スミス。
「国富論」、すなわち「神の見えざる手」という有名
な言葉の下で、利己的で、自己中心的なホモ・
エコノミクスを正当化したと理解されています。
一方で彼は、「道徳感情論」の中で、社会倫理とは、
利他的動機を重視し、人間相互の共感の上に成り立つ
といっています。
経済学と倫理学の統合も重視していたということ。2014年に発刊された、「経済学41の巨人 -古典から
現代まで」(日本経済新聞社) 。
第1章 経済学の7人の英雄
K・マルクス、アダム・スミス、J・M・ケインズ、
J・A・シュンペーター、F・A・ハイエク、マックス・
ウェーバー
J・A・シュンペーター、F・A・ハイエク、マックス・
ウェーバー
第2章 経済学をつくった人びと
F・ケネー、D・リカード、T・R・マルサス、J・ベンサム
、J・S・ミル、ジョン・ロー
、J・S・ミル、ジョン・ロー
第3章 限界革命の群像
W・S・ジェヴォンズ、L・ワルラス、V・パレート、
C・メンガー、E・v・ベーム=バヴェルク
第4章 近代化する経済学
A・マーシャル、A・C・ピグー、F・Y・エッジワース、
I・フィッシャー、K・ヴィクセル、A・クールノー、
I・フィッシャー、K・ヴィクセル、A・クールノー、
T・ヴェブレン
第5章 ケインズ革命の攻防
P・A・サムエルソン、M・フリードマン、J・R・ヒックス、
R・F・ハロッド、J・ロビンソン、J・トービン、
R・F・ハロッド、J・ロビンソン、J・トービン、
F・モジリアニ、J・E・ミード
第6章 現代経済学の巨星たち
J・M・ブキャナン、J・K・ガルブレイス、K・J・アロー、
K・G・ミュルダール、S・クズネッツ、W・レオンチェフ、
L・R・クライン、G・ベッカー、J・v・ノイマン
K・G・ミュルダール、S・クズネッツ、W・レオンチェフ、
L・R・クライン、G・ベッカー、J・v・ノイマン
”むしろ経済学は、哲学、歴史学、心理学、社会学
などの人文科学と結びついた「人間学」であるべき
だ、というのが本書最大のメッセージで
などの人文科学と結びついた「人間学」であるべき
だ、というのが本書最大のメッセージで
ある。”
「人間学」の大事さをあらためて思います。
高橋是清翁の言葉を紹介して終わりとしましょう。
「一足す一が二、二足す二が四だと思いこんで
いる秀才には、生きた財政は分からないものだよ」
「一足す一が二、二足す二が四だと思いこんで
いる秀才には、生きた財政は分からないものだよ」
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