『脳はプロセスの中でこそ成長する』

「心は体のどこにあるの?」

こんな問いを受けたら、あなたはどう答えますか?

左胸の上に手を当てて「ここです」と答える方は
案外多いようです。


















確かに、日本語で言うところの「心」には、
「気持ち」、「気分」など、いわゆる「情動」的な
ものが含まれています。

「心が動かされる」や「心を悩ます」
という用法
がこれにあたります。

私たちは好きな人を見て「ドキドキ」したり、
悲しいことがあると「胸が締め付けられる」ような
感覚を覚えるものなので、「心」が「心臓」にある
という気持ちになるのは、ごく自然なこと。

脳科学では心の働きとして、
「認知、運動制御、情動、記憶・学習、睡眠・覚醒、
認知的意識、思考、言語、注意、感情、意思、自意識」
の12種類を挙げています。

これら各々の働きを総合して発揮される心の働き
は、神経細胞が集まっている「大脳皮質」で行っている
ということになります。

とくに、「感情」、「意思」、「自意識」の三つの働きは、
人間らしさを作る「心」の要
といえるものですが、
基本的には他の働きと同じように、外界からの刺激に
対する大脳皮質の反応
によるものだそうです。

かつて理化学研究所で「脳型コンピュータ」の開発
に携わっていた故・松本元氏は、ヤリイカの神経細胞
の研究でノーベル賞候補にも挙げられましたが、
脳のメカニズム解明に関して独創的な研究を行って
いました。

















脳型コンピュータとは、“自発的に考え、学習する”
コンピュータ。

その発想は、入力情報をプログラムに沿って
“処理する”という、従来のコンピュータの仕組みに
とらわれない斬新なものでした。

松本氏は、「脳」と「コンピュータ」の違いを、
「プロセス」と「出来高」によって区別
していました。

コンピュータの評価は、入力情報をどれだけ速く
正確に処理して、出力するか、つまり「出来高」

決まります。

それに対して人間の脳は、入力から出力にいたる
「プロセス」の中で大いに発達
していくもの。

人が何か新しいことに取り組むとき、予期せぬ事態
が当たり前に起こる
もの。

その予想外の出来事に臨機応変の対応をしていく
ことこそが脳の特質
であり、機械には真似できない
メカニズム、かつ、人間社会が発展していく鍵です。

したがって、脳の特質を理解できない組織は
発展の芽を出すことが難しい
かもしれません。















『出来高評価のもとでは、人間の脳から生きがい感
が失われる。

失敗や挫折の中にあっても、やりたい仕事に取り組
んでいるときに脳は活力を得る』


入力、出力を繰り返すことで発達する脳のしくみは、
ひとつ脳の世界だけに留まらず、社会や歴史を発展
させていく原理
でもあると、松本氏は説きました。

目標を定め、それに向かうことで発達を繰り返す脳


大切なのは結果のみにこだわるのでなく、プロセスも
大切にすること

プロセスを楽しむ余裕を与えず、結果ばかりを重視する
と、脳の高次な発達は止まり、その人の人格は矮小化
へと向かいます。

そして、目標とは自発的なものであり、他者が設定する
ノルマとは異なる
ものです。
 
『自分の会社がどういう勝ち方をするのか決めずに、
社員を孤独に追いやり、結果だけを問いつめていく
ような会社は結局、失敗していますね。

成果を欲するなら、成果を出せる仕組みを組織に
取り込まねばなりません。

その時に大事なのは、やはり育成なんです。

現場で小さな達成を積み上げていく方式のトヨタ。
クビ切りはしないと社員に宣言したホンダ。

技術的な競争では厳しいプレッシャーがありますが、
業績が順調な会社は、人材育成と継続的な人間関係
の構築をきちんと行っています。』
(高橋伸夫・東京大学大学院経済学研究科教授)

周辺環境の変化が著しく起きる時勢にあって、それに
適応するための思考と行動をいかに行えるか、
個人と組織の両方に問われる時代
に入りました。

「人間の脳はプロセスの中でこそ成長する」
という
脳の特質を理解し、働く社員の心を大切にする個人や
組織には発展の可能性が大いにあるのではない
でしょうか。 

あなたの組織ではいかがですか?



”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”