『コミュニティデザイン』という
新しい仕事がある。
「良質な人のつながり」をつくること、
地域の人が地域の課題を自分たちで解決する
ために、人がつながる仕組みを設計する」
という素敵な仕事。
新しい仕事がある。
「良質な人のつながり」をつくること、
地域の人が地域の課題を自分たちで解決する
ために、人がつながる仕組みを設計する」
という素敵な仕事。
このデザインを創造してきた山崎亮さん
の話を、昨日講演会で聞くことができた。
会場の7割くらいは女性のお客さんの中、
『素晴らしいね!』の声が会場のあちこちから
聞こえてきた。
ユーモアたっぷりで明るいトークに、私を含めて
観客の皆さんはすっかり感動、感動☆
日本国内の各地で高齢化・過疎化が進み、
また赤字自治体が増えて、元気のないまちが
どんどん増えていく中、それぞれのまちが持つ
課題を明らかにし、まちに住む人たちが自らの
手で解決するための方法を提案する
「コミュニティデザイナー」。
TV番組『情熱大陸』、『クローズアップ現代』など
に出演し、全国の自治体から山崎さんは引っ張り
だこです。
昨日は、島根県の隠岐諸島の一つ、中ノ島にある
「海士町」(あまちょう)での
「第四次海士町総合振興計画」の取り組みが
メイン内容。
高齢化で人口減少の最先端をいくというこの町
での取り組みを行ったことについて、
『これからの日本での先進事例になる、
人口がまだ減っていない都会は遅れていて
参考にならない。いち早く人口が減っている所が
何をしているかを把握したものが勝つ』
という非常にユニークな逆転の発想を語った。
平成大合併の中、独立を守ったこの海士町には
300人以上のIターンがいる。
しかし、Iターンと地元居住者の仲が悪く、
その仲を取り持てるはずのUターン組もこれまた
どちらとも仲がよくない。
そのような状況の中で、町の特性を
いかに強みにして、参加者の自立と連携を図って
町の総合計画を構築するか?
そこで、山崎さんのコミュニティデザイン力が
動き始めた。
総合計画に参加した町の住民、下は
14歳から上は71歳まで、100人が集まり、
テーマ毎に4つのチームに分かれて各20人ぐらい
で一緒に動いていくこととなった。
総合計画をつくるときに町長から
『地元に継続して住んでいる人と、Uターンで
戻ってきた人、Iターンで新しく入ってきた人たち
が、相互にうまく情報交換ができていない。
この辺をうまく結び付けてほしい』
と言われた。
Iターンの人は、島の魅力をものすごく感じた
から移住するが、島で暮らしてきた人から見た
島の良さと、外で暮らしてきた人から見る島
の良さは異なる。
そこをうまく擦り合わせられるかが、重要な
ポイント。
そのために、「プロジェクト」が必要という。
単に話をするだけでなく、そこにひとつ
のプロジェクトがあれば、それを通じてお互いが
「島の中からの視点はこう見える」
「外からの視点ではこう見える」と分かり合い
やすくなる。
そこで「地元に継続して暮らしている人」「Uターン
の人」「Iターンの人」がちょうど3分の1くらいずつ
混ざっていて、三者が密接に結び付くように
チーム作り。
プロジェクトを円滑に進めていく上で、そこは絶対
に結びつけておきたいからだった。
チームビルディングがうまくいくことで、
後は住民同士が知恵やアイデアを出し合い、
そこに山崎さんたちのデザイン力も加わり、すばらしい
総合計画が出来上がった。
『島の幸福論』と名づけられたこの計画は、
2010年度グッドデザイン賞を受賞。
『それまで同じ島に住んでいても知らないままの
関係でいた人たちが、このプロジェクトをきっかけに
知り合いになっていく。
そんなきっかけをつくりたいんです。
総合計画というよりも、それをネタにして集まった人たち
の人間関係が築かれていくことが大事なんです。』
家族でもない、会社の同僚でもない、ふだんとは異なる
人間関係。その分ちょっとした相談もできる関係になる
のだという。
このようなつながりをたくさん作っていくことが、
社会の包容力を大きくしていく有効な手段になる。
コミュニティには、まちを元気にする力がある。
たとえば、まちの祭りや寄り合い、道端での夕涼みなどを
思い浮かべてもらうと、そこには「人と人が結びつくこと」
で生まれる楽しさがあった。
とはいえ、希薄になった地縁型コミュニティを昔のまま
に復活させることは、あまり現実的ではないと、
山崎さんは言う。
テーマ型のコミュニティを地域で育てることで、
疲弊した地縁型コミュニティを活性化させたり、
テーマ型と地縁型のコミュニティが一緒に何かを
したりすることで、その場所に人が集まるようになる。
この2つのコミュニティをどう接続し、
『人がつながる仕組み』をつくっていくかが、
コミュニティデザインにとって大切なことなのだ。
山崎さんのデザインの進め方。
そこには特徴的な手法の多くが詰まっている。
ワークショップ、地域資源の掘り起こし、
産業遺産、特産品開発。
このまちづくりの手法は、全国の自治体から
大きな注目を集めている。
それともう一つ特筆すべきは、山崎さんの組織
である「studio-L」は、プログラムの
仕事が主業務であり、設計は従になっている
ということ。
これはハード重視の考え方が強い日本社会に
おいて、非常に特異である。
設計よりも建築、建築よりも土木の方が
儲かるというのが、これまでの日本社会の常識
だから。
山崎さんが創造してきた「コミュニティデザイン」は、
自治体でのまちづくりの活性化という実績だけで
なく、かたちのないソフトの設計をビジネス
の軌道に乗せたという点で、非常に大きな
意味を持つ。
まちと人とにやる気を起こさせるパイオニアは頼もしい。
最後に、山崎さんのいうデザイナーとは。
『デザインは、原則的には『デ・サイン
(記号的なるものから脱する行為)です。
だからデコレーションで単にかわいいね、きれいね
っていう表層にある記号的なものはデザインじゃ
なくて、深く入って本質的な課題を見極めて、
それを上手く解決していけるような道筋を発明して、
さらにそれが最終的に美しいものとして定着できる
ように形作っていく行為が「デ・サイン」だと思う
んですね。
デコレーションだけをやる人達は、そんなに深い
課題を知らなくても、とりあえず目の前ものが
きれいで、人がちょっと楽しいなと思えれば
いいという表面の部分に関わっている人達
だと思います。
コンサルタントっていう人達は、課題がどこに
あるかって所までは突き詰めますが、それを
美しいものにしてみんなが共感して
「オレもやりたい!」ってところまではしない。
課題を明確化して、その課題をどうやって
解決すればいいかっていう割と機械的な
アプローチをとる。
デザイナーだけが、デコレーションの美しさ
と本質的な問題を解決していく行為を
両立出来る職業だと思っているんですよ。
本質論をしたってみんなは興味がないので、
それをみんなが楽しいって寄ってこれる
ような美しいシステムやプログラムとして
作り上げていくのが、デザイナーの仕事
だと思います。
それはデザイナーしか出来ないんじゃない
かなって思います』
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