『思いやりは「バカの壁」を越える』

『信じ込んじゃだめだよ。自分の頭で考えなくては!』

2003年
に出版された養老孟司さんのベストセラー
著書「バカの壁」

10年経った今、あらためてこの「バカの壁」を考えて
います。

そもそも「バカの壁」とは・・・

自分の理解できる限界のこと・自分が知りたくない
ことについては、自主的に情報を遮断すること


”人間というものは、意識的か無意識的かに関わらず
、ある程度以上のことを考えるのを諦めたり思考停止
をする。

これは自分が作り出している壁。

思考停止しているというのは、聞く耳がない
という
ことで、その状態に陥っている人にいくら説明しても
理解してもらえないのは当然のこと。

説明しようとしている人にとって、その説明を理解
できない人は「バカ」ということになる。

したがって、この壁は「バカの壁」と呼ぶに相応しい。

自分自身が理解できる領域と出来ない領域の境に
存在する壁も「バカの壁」
である。”

 



















「バカの壁」
が世に出されてから10年、その間に
壁は低くなっているのでしょうか?

今どきの日本ではとにかくさまざまな「力」
なければ生きて行けないという全体的な風潮の
中、「何とか力」のブームが出版界に起き、
未だに続いているようです。

何方かが挙げていたのですが、現在ある「何とか力」

■社会人になるために・・・大学生力、質問力、面接力 
■社会人になったら・・・社会人力、部下力、しごと力 
■キャリアが落ち着いたら・・・出会い力、恋愛力、結婚力 
■家庭を持ったら・・・消費者力、そうじ力、親力、マネー力 
■国際人たるもの・・・語彙力、発音力、リスニング力、会話力
■友だち作りには・・・人間関係力、常識力、空気読み力 
■快適な人生には・・・人生力、脳力、元気力、スルー力、
            鈍感力、意志力、自信力、人間力

いかがでしょうか、皆さんの本棚の中にも
この「○○力」の本が置かれていませんか? 

もしかすると一度読んで(もしくは途中まで)、
そのまま 眠っていたりして。

いずれも「バカの壁」を超えることにつながりそうな
タイトルで、それが目的で買うわけでないにしても、
たくさん売れて出版社は喜び・・・

けれども、日本の社会の中では、「コミュニケーション
不足」「わかりあえない」「・・・だろうが通じない」
「報連相不足」、
はたまた「世代間闘争」なる過激な
言葉が聞こえてきます。

これら全て「バカの壁」

ということは10年前より壁が高くなっている・・・?

私たちが今生きているこの世界はつかみどころの
無いもので、「わかる」ことは安易にできない

養老さんは言います。

人間の話す言葉による説明、コミュニケーションには
「どれだけ話しても完全には分からない」ことがあります。

言葉のみでは伝えられず、誰にも存在する理解の壁


それは私たち一人ひとりの生い立ちや、経験、物事に
対する認知方法、立場、これまで蓄積してきた
脳への情報が異なる
ため。

『脳を入出力装置と考え、状況というインプットXに対する
人の反応や対処法YにはY=aXという直線関係があると
しよう。

このレスポンス係数aにはマイナスからゼロ、プラスまで
人それぞれによって異なるはずである。』


人によって現実のとらえ方は違い、人は誰も皆異なった
世界観を持っている
のですね。
 












この世に
絶対的な「正しさ」や「正義」は存在しない
のに、「これが正しい」「これが当たり前だ」と思い
込むことは思考停止の状態


社会や自分の属する集団の意見を盲目的に正しい
と思い込み、それを鵜呑みにするのは危険
なこと。

安易に「分かる」、「話せば分かる」、「絶対の真実が
ある」などと思ってしまう姿勢、それは一元論に
落ちてゆく
ものです。

一元論にはまるということは、強固な壁の中に住む
ことになる
こと。 

すると自分とは違う立場の人のことが見えなくなり、
当然話は通じなくなり
ます。

「バカの壁」は、個人の間のコミュニケーションだけ
でなく、戦争、テロ、民族間・宗教間の紛争まで
たどりつく
もの。

互いに話が通じない関係は世に蔓延しています。

『バカとか偉いとかは脳の構造や機能から判定する
ことは不可能である。

偏った能力(記憶、計算など)を有する人には
社会的適応力がない場合が多い。

つまり賢い人とは「社会に適応する能力に優れた人
で、バランスのとれた常識人」だということになる。』


私たち一人一人は、異なる個性を持った生きもので
あり、同じに問いを得ても様々な解答が生まれること
は不思議ではなく、むしろ当然のこと。

複数の解を認める社会は寛容を持ち、住みよい
社会
です。


それでは「バカの壁」を乗り越えるにはどうすれば
よいのか?

養老さんは、体を使うと自然に身に付くものである
といいます。

初めは歩けなかった赤ん坊が、何度も転ぶ経験
から、転ばない歩きを覚える
のが、その真理で
あると。

学習とは、単に本を読み、知識を吸収する事では
なく、学んだ知識は使って、現実に実践・応用する
事こそに価値がある
もの。

『固定観念の壁の内側のみで生き、外側に広がる
世界を知ろうとしない思考停止の状態から脱出する、
外向きの思考が、重要である。

人間の意識が、自分だけで完結する世界から、
常に周りの人との新しい関係作りが重要である。

自分にたちはだかる「バカの壁」を乗り越える事が、
真の意味で学ぶ事、知る事である。

自分の「バカの壁」の向こうには、多くの知恵、
ロマン、楽しみ、感動、が無限に広がっている。』


世の中で大事なのは、「相手の立場を考えること」
いう養老さんの言葉。

思いやりということがグローバル化の中でますます
重要になるのでしょう。


”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”