『情けは人の為ならず』

「相手のためになるかどうかを考えて、今、自分ができること、
しなければならないことをしていく。　

そうした行動は、いい循環を生みます。　
結局、自分のもとに、とてもいい形で返ってくるものなのです。」

照隅会「こころの生態系づくり」のゲスト、高野登さんの言葉
が心に響きます。

この言葉に、「情けは人の為ならず」の大事さを思わされます。

これは「他人に親切にすることは他人だけでなく、自分にも
メリットがある」という意味。

私たち人間は多かれ少なかれ、日常生活で困っている他人を
見ると、たとえそれが自分の知らない人であっても助けて
あげたい衝動にかられ、多くの場合何らかの親切を行う性質
を持っています。

このような利他性は、動物界の中でも大変特異的なものと
いわれますが、どのような仕組みによって広範囲に及ぶ
親切の交換が維持されているのかは大きな謎とされてきました。

この謎を説明するために提唱されたのが、「社会間接互恵性」と
呼ばれる仕組み。

幼児期から日常生活の中で「社会間接互恵性」が働いている
という証拠が、大阪大学大学院人間科学研究科の研究グルー
プにより、科学的に実証されたそうです。

「ヒトにおいて親切が広く交換されるための仕組み(社会間
接互恵性)が5―6歳齢の幼児の日常生活で働いていることを
世界で初めて確認しました。

研究では、大阪府内の5.6歳児70人を対象に日常の行動を
観察。

1人がおもちゃを貸すなどの親切な行動をとった際、
周囲１メートル以内にいた他の児童1人のその後10分間の
行動を、日常時と比較した。

その結果、近くにいた児童が「親切を行った児童」に対して
とった親切行動は、日常時の１時間あたり0.47回から
5.58回へと大きく増加。

体に触れたりして仲良くしようとする行動の頻度も2倍以上
となり、社会間接互恵性が幼児期から日常生活で発揮されて
いることが明らかとなった。

このことから、幼児が第三者間のやり取りを観察して
他者の親切さを評価していること、親切を行う幼児は後に
まわりの児から親切にしてもらいやすく、自分が親切にした
分をまわりの児から返してもらっていることが明らかに
なりました」
http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/ResearchRelease/2013/08/20130808_1

5.6歳児ともなればすでに、集団生活を営む上の社会的
教育として「助け合うこと」や「分け合うこと」を教えられて
いますが、まだ子どもなので、どうしても自分中心に
なってしまいがち。

けれども、誰かにやさしくされるとうれしくなって、
自分も人にやさしくなれます。

そして、やさしい気持ちを共有したくなり、そのやさしさは
伝播していくようです。

私たち誰もが持っている「社会間接互恵性」を活かしつつ、
百年先の未来を見据えてどのように生きることが大事なのか、
共に考えていきたいですね。