『自然生態系保全を企業活動に組み込む』

日本製紙と日本コカ・コーラが、「森林資源と水資源の保全・保護」に関して2021年度末までの協働活動協定を締結したそうです。

製紙事業をはじめエネルギーや化学素材などの分野で、森林資源を活用する日本製紙と、飲料製造で多くの水を使う日本コカ・コーラがそれぞれ、これまで培った環境技術や保全活動の経験などを生かしながら、「森林と水資源の保全」に向けた活動を展開していくというもの。
日本製紙は森林保全を、日本コカ・コーラは水資源保全に向けた活動を展開しており、「経験や知識を相互に生かしていけば、より効率的に森林と水資源の保全を進めることができる」と判断したといいます。

日本製紙が全国各地に保有する計約9万ヘクタールの社有林
を活用して、両社の自然保護活動の範囲を拡大していく予定で、活動の初めとして今年11月以降に、日本コカ・コーラの主力水源地の一つで、日本製紙の社有林がある片品村で、子供向けの環境教育や地元の自然保護活動を支援する取り組みを始めるそう。
 http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20131027-00000006-biz_fsi-nb

ここ最近、日本でも自然資本(ナチュラル・キャピタル)が企業で注目され始めています。自然資本とは、地球の自然生態系の財産(水・土壌・大気・植物、動物)から成るもので、人類社会はその恩恵である「生態系サービス」によって成立できているといえます。

ところが、生態系サービスやそれを提供する自然資本のストックは、これまで社会資本や金融資本と比べて適切にその価値が評価されてきませんでした。私たち人間が生きる上で必要不可欠であるにも関わらず。
「生物多様性COP10」が開かれた2010年、日本では企業と生物多様性のつながりに関心が持たれました。この時発表されたのが「生物多様性の経済学(TEEB)」(TEEBは「生態系と生物多様性の経済学(The Economics of Ecosystem and Biodiversity)」の頭文字をとったもの)

「TEEB」はすべての人々が、生物多様性と生態系サービスの価値を認識し、自らの意思決定や行動に反映させる社会を目指し、これらの価値を経済的に可視化することの有効性をうったえています。

尚、「TEEB」ビジネスセクター版には日本企業が1社掲載されています。私が前職時代に作成した「企業活動と生物多様性に関するマップ」が製造業の取り組みとして事例紹介されました。
http://www.iges.or.jp/jp/archive/pmo/pdf/1103teeb/teeb_d3_j.pdf
生物多様性や生態系サービスの価値を適切に認識するためには、経済的価値に置き換えることなどにより可視化することは有効な手段の一つです。その流れを受けて最近、こうした知見を高めるとともに、企業に対して自然生態系への依存度と影響度を量的・質的に開示させる動きが国際的に起きつつあります。
 
冒頭に紹介した、自然がもたらす恩恵を受ける異なったビジネスを行う企業同士の協働による「森林資源と水資源の保全・保護」は活動と共に、その効果を含めた企業活動全般での自然における損益の情報開示をすれば、より素晴しいものとなることでしょう。その上で両社の協働が、他社への良い刺激・事例となり、自然生態系の保全を企業活動に組み込む活動が活発化されることを願います。

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”