『天風さんに学ぶ我が人生の実現』

”「暗黙智」とは、潜在意識を基盤として、心に描くイメージの構図であり、「人物としての基本」をつくる。この基本ができていてこそ、 高等教育における専門的な知識が身につき、  幅広い「専門人」を育成することが可能となる。”(中村天風師の言葉)
神渡良平先生の名著「宇宙の響きー中村天風の世界」。天風さんがかつて修行されたヒマラヤ第三の高峰カンチェンジュンガ山麓のゴルケ村に神渡先生が行かれる予定です。

中村三郎、後の天風さんは青年時代奔馬性結核にかかり、死に直面します。病気を治したい一心で、米国で医学を学び、世界各国の名医に罹りますが、回復の見込みはありませんでした。 

ヨーロッパから絶望しての帰り、天風さんは船中でヨガ哲学の聖者カリアッパ師と邂逅し、自分についてくるよう言われ、師が住むゴルケ村で修行に取り組み始めます。

”カリアッパ師は、突然三郎に尋ねた。「お前、病が治ったらどうするのか?」「まだ、考えていません」 三郎は、そう答えた。

「道を歩いている人に、どこに行くんですかと聞いたとき、分らない。足に聞いてくれ。ただ右と左の足を交互に動かしているだけなんだから」と答えたら、お前はどう思う。お前もそれと同じだ。

お前には人生観らしいものが何もない。アメリカで医学を勉強したらしいが、逆にその知識が災いして、ちょっと咳しても恐れ、不衛生だといっては神経をすり減らし、オドオドばかりしてる。

一番肝心の、「私は何をするために、この世に生まれてきたのか!」ということを考えていない。本末転倒もいいところだ。」 (「宇宙の響きー中村天風の世界」”

師の厳しい問いかけに天風さんはオラビンダ岩と呼ばれる大岩の上に座り、瞑想します。

”この宇宙の根本主体の意志は何か。何を願って、この世を創造したのか。
「先生、人間は宇宙の進化と向上に寄与するために生まれてきました。私たちが、肉体を得て、地上で人生を送るのは、その魂のレベルを上げていくためです」

カリアッパ師は頷いた。
「人生の目的はそれだ。人の世で脚光を浴び、金儲けするためではない。ただ一つ。宇宙の進化と向上に貢献し、自分の魂のレベルを引き上げていくことだ。」”

天風さんは二年数ヵ月に渡る修行で、悟入転生の新天地を拓きます。自分の健康はとても回復しないと思い込んでいた強い気持は次第に薄れ、「医学で治らないといっても、自分は治るのだ!そうだ治るとも!」という思いを持ちます。

回復して元気に活動している状態だけを自分の心に絶え間なく描く
よう努め、とうとう不治の病であった本馬性肺結核を克服します。
神渡先生は、ゴルケ村を昔訪れた時、夜中の三時に起きて、そのオラビンダ岩に登り、天風先生の流儀で瞑想しました。
”夜は白々と明けて、山の端から太陽の光が差した!思わず合掌した。全身が金色に輝き、ありがたさに、両の目から大粒の涙が流れた。”

そしてこの岩で瞑想していると、「人間は受信体であると同時に発信体でもある」ことがわかったといいます。
”宇宙は波動で形成されている。人間の想念も波動だ。人間が思考し、想念を発するとき、その想念は顕現し実質化する。人間は能動的な想念を発することで、自分の人生を創造できる。人間の心で行う思考は、人生の一切を創る。これが数十年来かかって苦心して悟った、
人間の生命にからまる宇宙の真理だった。”
 
神渡先生とご親交ある脳神経医、篠浦伸禎先生(都立駒込病院脳神経外科部長)は、瞑想の効果についてこう語ります。
”最近の脳科学研究で、帯状回を活性化する方法として「瞑想」が有効であると報告されています。帯状回は、刺激がないときに活性化し、刺激を受けると活動が抑制される性質があります。(帯状回は人間らしく脳を使うための重要な機能を持つ部位)

だから、瞑想で何も考えない(刺激を与えない)訓練をすれば、帯状回を活性化させ、暴れそうになる動物脳(自我)をコントロールしてくれるようになります。ストレスによる抑うつ気分が解消するということが分かってきたのです。瞑想は効果が科学的に明らかです。

薬は不要ですので、副作用もない安全性は大きなメリットです。さらに言えば、問題になるような精神状態でなくても、健康な人でも瞑想すれば、より帯状回を活性化させることができます”
 
http://business.nikkeibp.co.jp/article/jagzy/20130703/250596/?P=2
神渡先生

は、

ご自身の瞑想体験

についてとても興味深いことを言われています。

”その「存在」は静かで、平和である。限りなく優しく、岩石のように強くもある。恐れは消え、喜びが恍惚感として静かなレベルで感じられる。不安も後悔も痛みもなく、また期待もない。始まりも終わりもなく、悲しみも欲望もない。

すべてのものが完璧で完全である。時間が止まるとすべての問題は消える。心が静寂になると自我が消える。「純粋な意識」そのものが、本来の自分を光り輝かせる。宇宙を超越し、時間を超え、無限である。”


奇しくも天風さんは、上記を別の言葉で語っています。

”人生は我々が見ている世界そのものによって決まるのではなく、自分がどのように世界を見ているかでもって決まるのだ。昔から、自分の想念が自分の人生を形作ると言われているじゃろう。あの通りなんだ。自分こそが自分の人生の実現者なのじゃよ。

だからな、自分の精神レベルを高め、想念の力を増すことは、人生の主人公になれるかどうかの問題なのじゃよ。真理は書物の中に解説されているのではなく、自分自身の内にある。我が生命は大宇宙の生命と通じている。それが人間存在の本質なのだ。

感謝しなきゃ、感謝しなきゃ。人生を与えられたことを感謝しなきゃ。”
中村 天風 師(1876年7月30日 - 1968年12月1日)
日本初のヨガ行者。心身統一法を広めた。
30歳にして、結核を発病。33歳の時、病気のために弱くなった心を強くする方法を求め、アメリカへ。日本への帰国の途上、カイロにてヨガの聖人に弟子入りし、ヒマラヤで2年半修行。また、中国で孫文に「中華民国最高顧問」として協力。

帰国後、東京実業貯蔵銀行頭取などを歴任、実業界で活躍する。波乱万丈の人生を経て経済界で成功。その後、突然財産を処分し「天風会」創立。後進の育成に取り掛かった。

「人生は心ひとつの置きどころ」(中村天風) 

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”