『アンセル・アダムスと北米の自然』

昨日4月22日は敬愛する写真家、アンセル・アダムス
の30回目の命日。

私が彼の写真に出会ったのは、1987年。
当時22歳の時。

本屋で目にした雑誌の特集が彼の生涯を紹介した
ものでした。

その後、ヨセミテの地を踏むことができた私は、
アダムスが愛した自然の景観に深く魅せられて、
翌年にも訪れてしまったほどです。

献身的で根強い環境保護者であり、また著名な
芸術家であったアダムスは、20世紀のもっとも
熱心な国立公園や国立野生保護区の擁護者
の一人としてよく知られています。

写真、著書、粘り強い投書キャンペーン、シエラ
クラブで見せた統率力など、アダムスはほぼ
間違いなく、ジョン・ミューア以来個人としては
もっとも米国の自然界に対する一般の意識
と評価を高めることに貢献したと言えます。

20世紀を代表する写真家、アダムスは14歳の時
に初めて訪れたヨセミテ渓谷で写真を撮影した
ことがきっかけとなり、生涯にわたって米国の
国立公園などの雄大な自然の姿を撮り続けました。

ミシシッピ川とその支流、大平原、ロッキー山脈、
そして太平洋沿岸―
広大な西部は、さまざまな景観を見せる大自然
に包まれています。

19世紀、米国は西へ西へと領土を拡張し、一方、
先住民たちは伝統的な生活から離れることを
強いられました。

19世紀半ば、カリフォルニアで金鉱が見つかり、
大陸横断鉄道が走り、次第に多くの人にとって
西部への旅が可能になっていきました。

西部へと赴いた人々は、目の前に広がる
大自然の驚異や失われていく北米先住民の
文化を作品に残しました。

20世紀に入ると、西部の特徴的な自然の
風景に深く魅せられたアーティストたちが
居を構え、作品を制作していったのです。

私はかつて、1998～2000年の頃北米各地
を旅して回りました。アラスカの各地域や
ヨセミテ、キングストン＆セコイヤ、サンタフェ。

全て先住民の方たちの縁の土地であり、
原生の素晴らしい自然が広がる場所。

サンタフェで知り合ったナバホ族の方からは
名前をいただきました。 それは日本語で
”子熊”を意味するナバホ名でした。
 

先住民の人々がたどってきた歴史は厳しく
過酷なものでした。

自分達より後に土地へ入ってきたメキシカンや
アングロサクソンの白人たちに迫害を受け、
もともと住んでいた自然豊かな場所から、
辺鄙な場所へと追い立てられ、現在も暮らして
います。

彼らの住む居留地、周辺に広がる砂漠には、
幾多の涙と亡骸が眠っています。
大地の一部となり。

彼らは今も戦っています。
テレビやメディアなど白人文化は容赦なく
次から次へと攻撃をたたみかけてきます。

止むことを知らない広告。
彼らの文化を飲み込もうと襲い掛かってくる
見知らぬ文化など。

現代のテクノロジーが運んでくる猛攻撃に
抗って、何とか自分たちの価値観を守り、
生き方を守ろうとしています。 

ネイティブは決して、若者たちの流行や格好いい
というための安易なものではありません。

大地と共に生きてきた歴史の証であり、
自然の一部として生きてきた人々なのです。

彼らは言います。
「先進国の消費文明や自然を尊重しない生き方
が、やがては崩壊を招き砂塵に埋もれてしまう
ときがやってきても、きっと自分たちは
生き残っているはずだと」

彼らは歌います。
夜に感謝の歌を。

「大事なのは、物質的な豊かさではなくて、
命と命が運んでくれる豊かさに感謝することだ」

「どうか幸せに歩ませてください。
どうか目の前の世界が美しくありますように。
どうか背後の世界が美しくありますように。 
どうか足下の世界が美しくありますように。 
どうか頭上の世界が美しくありますように。 
どうか周囲の世界が美しくありますように。 
あらゆる世界が美につつまれてありますように」