”今の日本は、政治について絶望している人
が多い。なぜこうなったのだろうと考えてみる
ことが必要だ。
私は、政治家が実際に日本の将来を考えると
いう巨視的な視点がなくなっているところに
問題があると思う。
日本は結局他国と協調することによってしか
生きていけない以上、バランスのとれた国際
主義を身につけていかなければならない。
日本にそれだけのビジョンが欠けているのは、
政治に対する国民と議員との間に
コミュニケーションがないのだ。
私は、そのための役割を果たしたいと思って
いるが……”
(「後藤田正晴」保阪正康著より)
が多い。なぜこうなったのだろうと考えてみる
ことが必要だ。
私は、政治家が実際に日本の将来を考えると
いう巨視的な視点がなくなっているところに
問題があると思う。
日本は結局他国と協調することによってしか
生きていけない以上、バランスのとれた国際
主義を身につけていかなければならない。
日本にそれだけのビジョンが欠けているのは、
政治に対する国民と議員との間に
コミュニケーションがないのだ。
私は、そのための役割を果たしたいと思って
いるが……”
(「後藤田正晴」保阪正康著より)
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「後藤田の諫言」(朝日新聞コラムより)
いまの大学生に聞くと、中曽根康弘さんの名前は
「総理大臣だった」とクラスで1人か2人は知って
いるほど。
しかし後藤田正晴さんのことはまったく知らない
ようです。
内閣官房長官、行政管理庁長官、総務庁長官、
法務大臣、副総理などを歴任し、「カミソリ後藤田」
の異名を持ちました。
中曽根内閣の官房長官を長く務め、有名なできごと
に「後藤田の諫言」があります。
1987年、イラン・イラク戦争で両国がペルシャ湾
に機雷を敷設、これに対し中曽根さんがタンカー
護衛のために機雷除去の自衛隊の掃海艇を
派遣したいと言い出した。
しかし、後藤田官房長官は「それを自衛だと
言っても通りませんよ。戦争になりますよ」と諫め、
絶対だめだと拒否。
「私は閣議決定にサインしませんよ」と念を押した。
さしもの中曽根首相もあきらめた。
のちに後藤田さんにロングインタビューしたとき、
なぜ中曽根首相にあえて逆らったか聞いてみた。
「憲法上できないということもあるが、国民に
その覚悟ができていたかね。できていなかった
んじゃないか」と後藤田さんは明かした。
それから20年余りたって、安倍首相は自公協議
にコメントして、「極めて限定した集団的自衛権」
の範囲に「ペルシャ湾での機雷除去」も含める
べきだと主張している。
戦争が起きたら、戦地に行くのは安倍さんではない。
われわれ昭和生まれの年配者でもない。
自分の国が侵されたときならばともかく、他国の戦争に
までしゃしゃりでて、若者に血を流させる覚悟なんて、
私たちはとうてい持てない。持ちたくもない。
憲法9条を読み返しても、そんな血を流すことを
許容するとはどうしても読み取れない。
閣議決定で解釈変更などとは勝手すぎる。
せめても憲法改正という手続きをとり、未来をになう
18歳の若者たちを含めた国民投票によって、
ほんとうに「血を流す覚悟」があるかどうかを
聞くべきではないか。
(早野透=桜美林大教授・元朝日新聞コラムニスト)
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「カミソリ」と評され、中曽根内閣で官房長官、
宮沢内閣で副総理をつとめた後藤田正晴氏は、
大正三年(一九一四年)、徳島県麻植郡生まれ。
父増三郎は、地元の小学校設立に尽力し、
郡会議長、県会議員を歴任した有力者でした。
しかし、幼くして両親が相次いで他界したため、
姉の嫁ぎ先の井上家に身を寄せることとなります。
ペルシャ湾に機雷除去の自衛隊掃海艇を派遣する
ことを後藤田さんに固く拒否された中曽根さんは、
ホルムズ海峡の外のオマーン湾までならどうか、
と粘ったそうです。
すると、後藤田さんはこう言いました。
「何の効果があるんですか。仮にペルシャ湾の中から
SOSの合図があったときに、俺は入らないと言えます
か、言えないじゃないですか。中に入るのと同じこと
です。」(「情と理」講談社)
いま、安倍晋三首相は集団的自衛権の行使を
「限定容認」で押し通そうとしていますが、
後藤田さんならこう言うでしょう。
「全面容認と同じことです。」
後藤田さんは亡くなる前に次の言葉を遺しています。
「尊敬に値する人とは。
8月15日、陛下の敗戦の放送を聞いて、
それ以後の軍、民間人の動きを見て、
人間の値打ちっていうのは社会的地位とか
階級とかは全く関係ないと思ったね。
階級のない、社会的地位や名声もない人の中
に、本当に立派な人がいるということを、
その時初めて発見した。
人間の値打ちは、命のかかった最後の最後に
ならんと分からんよ、ということだな。
それを痛切に感じたね。」
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