『ニューヨーク・ スケッチブック』

「たとえば、いい女にめぐりあったとき、
あるいはいい女と別れたときでもいい。

気心の知れた男の友人と酒を酌み交わし
ながら、人生というやつの玄妙さについて
心ゆくまで語り合いたくなることがある。


そんなとき、かりに飲む相手を現存する

欧米の作家たちから選ぶとしたら

だれがいいだろうなどと夢想することも

あるのだが、いまのところ、真先に念頭に

浮かぶのが、本書の著者ハミルだ。


そのわけは、本書を一読してもらえれば

おわかりいただけるだろう。」

昔、大学時代に読んだ「ニューヨーク・スケッチ
ブック」の訳者あとがきに載っていた言葉。
 
1980年代、ボブ・グリーンやアーウィン・ショー
など、ニューヨークを舞台にした短編集
が流行り
、日本では常盤新平さんや井上一馬さんが
したものをよく読んでいました。


私の本棚に置かれている文庫本は初版で、昭和61年

出されたもの。米国を代表するジャーナリスト

一人、ピート・ハミル氏の作品


ハミル氏は、ニューヨーク・ポスト紙など大衆紙の

記者として活躍しました。日本では映画「幸福の

黄色いハンカチ」(1977年)の原作、ニューヨーク・

ポスト紙のコラム「ゴーイング・ホーム」を

書いたことで有名です。


「人間を取り巻く外部環境がどんなに変化をとげようと、

われわれが人を愛し、別離に涙する動物であることを

やめない限り、本書に登場する男女は、われわれの

ごく近しい隣人たちでありつづけることだろう」

「孤独と喪失に彩られた、見えない街」NYで生き、

愛し、悩み、悲しんでいる人々。


恋人との再会、友人との別れ、酒場のひととき...

ごく普通の男女が織りなす日常の一瞬を絶妙な
語り口で浮きぼりにした、三十幾通りの人生ドラマ。

どの話も、ニューヨークで暮らす人々の日常の一瞬

が描かれた、数ページで終わる短い話。

そして、登場する人物も、ほんの一面だけが
描かれています。

そのおかげで、どの話を読んでも、登場人物の
背景を、いろいろと想像
することができます。

青春の日にその感動が胸にしみわたり、夢中
になった作品集でした。
こちらはスティングの「Englishman in New York」。


Modesty, propriety can lead to notoriety 

(謙虚さや礼儀正しさはある意味で悪評を招く)

You could end up as the only one

(でも、きっと最後には唯一無二の存在になっている)

Gentleness, sobriety are rare in this society

(親切や節度を守ることは、現在の社会で見かけるのは稀である)

At night a candle’s brighter than the sun 

(夜になれば、ロウソクは太陽よりも輝くのだ)

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”