『人間の総合力』

最近私の周りでよく聞く言葉に「メタ認知」「非認知能力」

があります。


いずれも「認知」がつくものですが、しばらく前から大きな社会問題

になっている「認知症」にもこの言葉が付いていますね。

ではそもそも「認知」とは、なんでしょうか?
理解、判断、論理などの知的機能を指し、精神医学的には

知能に類似した意味であり、心理学では知覚を中心とした概念。


心理学的には知覚、判断、想像、推論、決定、記憶、言語理解記憶、

言語理解といったさまざまな要素が含まれますが、これらを包括して

認知と呼ばれるようになりました。


認知症では物忘れにみられるような記憶障害のほか、判断、計算、

理解、学習、思考、言語などを含む脳の高次の機能に障害がみられます。


この認知に対する能力、すなわち「認知能力」は、IQやアチーブメント

・テストなどで測れるもの。

理解、判断、論理などの知的能力とも言い換えられており、

テストで好成績を収める、頭がいい、勉強ができる、と言われる人ほど

認知能力が高いとされてきました。これまでは。

そして今、認知能力はテクノロジーにより代替される方向にあります。

少子高齢化が続く日本で政府は、成長戦略として労働力人口の減少対策に

「AI」の導入を進めているそうです。


「AI」とは物事を学習し、考える能力を持たせたコンピューターや

プログラムのこと。


「非認知」的能力とは、物事をやり抜く力、リーダーシップ、

社会性、意欲、忍耐力、自制心、メタ認知力、回復力、対応力、

創造力、好奇心などをいいます。


汐見稔幸さん(白梅学園大学学長・東京大学名誉教授)
は、

「非認知的能力」についてこう説明しています。


遊びをやりながら、この道具を使ったら面白いと先生が教えてくれて、

確かにできたと、考えたり、工夫をしながら出来たという自己有能感

や達成感。


工夫すれば何とかできるという粘り強さ、素直に人の話を聞く力や、

みんなでやってみようぜと協力する力、数字には出てこないけれど、

間接的に人間の判断だとか行動を助けているような様々な力が

「非認知能力」なのです。”

暫く前に読んだ中室牧子さん著『「学力」の経済学』では、

しつけなどの人格形成や体力・健康などへの支出を含む

「人的資本への投資」の有用性を言っています。


非認知能力は 、認知能力の形成にも一役買っているだけでなく、

将来の年収 、学歴や就業形態などの労働市場における成果にも

大きく影響することが明らかになってきたのです。


どんなに勉強ができても、自己管理ができず、やる気がなくて、

まじめさに欠け、コミュニケーション能力が低い人が社会で

活躍できるはずはありません 。

一歩学校の外へ出たら 、学力以外の能力が圧倒的に大切だというのは、

多くの人が実感されているところではないでしょうか。


シカゴ大学の
ジェームズ・J・ヘックマン教授らは研究で、
意欲や社会的適応力といった「非認知能力」を考慮しないで、

試験成績やIQで計測される「認知能力」だけを人的資本として

評価してしまうと、人的資本の評価として十分ではないと指摘


”IQが示すようなテストを解く能力は、人生の諸問題を解決する

能力と同じではありません。現実に直面する試練は、多くの異なる

特徴を合わせ持っているからです。


だからこそそこで、IQでは測れない忍耐強さや自己抑制力、

良心が重要な役割を果たすのです。高いIQが必ずしも高次元の

人生をもたらすわけではなく、一番重要なのは「良心」だと

私は思います。”

「メタ」 超・高次の意味を表し、「メタ認知」とは自らの認知過程

をひとつ高い次元から知覚、 記憶、学習思考すること。


その概念の起源は、「無知の知」を説いたソクラテスの言葉

「彼らは何も知らないのに知っていると信じているが、

自分は何も知らないということを自覚している」にあるといいます。


超一流アスリートは、自分自身の状態を極めて客観的に把握しており、

メタ認知能力が高いそうですが、とりわけイチロー選手は

相当高いレベルでこれを有していることで知られています。


日本人がアメリカで野球をやろうと思ったら、何よりも
大切なことは、自分で自分を教育できることだと思います。
自分で自分をコーチできる能力。

これは絶対に必要でしょうね。これを身につけられるかどうかと

いうのは、その人の意識、考え方、生き方に関わってきます。


人のやることも自分のことのように捉えて、自分だったらどうするか

ということを常に考えていられるかどうか。

ぼくは、1試合、1試合、ふりかえっています。
まとめてふりかえることはしません。

一日の反省はグラブを磨きながら、昨日試合後に何を
食べたか、よく眠れたか、というところから、実際にゲームが

終わるまでに起こったすべてのことをよく振り返って考えてみる。

考える労力を惜しむと、前に進むことを止めてしまうことになります。

人生の目的は人それぞれにあるもの
ですが、学校で良い成績を

取ることや有名校に進学することは途中経過でしかなく、

その後の自分の人生をどれだけより良きものにできるかが大事

ではないでしょうか。


そして「メタ認知力」を含む「非認知能力」はイチロー選手

行っているように日々の繰り返しの中で鍛えられていけるものであり、

心の持ちようひとつでやり抜く力を発揮できるもの。


「人間学」の学びは、「非認知能力」向上につながっていること

がよくわかります。


「非認知能力」は「認知能力」と同じように重要両方を
バランスよく向上させることで、自分の総合力が高まっていく
のですね。

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”