「何かを知りたいという好奇心」


『目標は難しいほど魅力がある。誰もが見向きをしないような石ころを拾い上げて、ダイヤモンドに仕上げていく。どうなるか分からない混沌とした状態の中から立ち上げていくところに大きな魅力を感じる』

(画像は、ノーベル賞公式ツイッター


今年のノーベル医学生理学賞を授賞した本庶佑(ほんじょたすく)・京都大特別教授の言葉です。「免疫反応にブレーキをかけるタンパク質を見つけ、画期的ながん治療薬の開発に道を開いた」ことが、高い評価を受けました。

本庶教授の研究をもとに開発された、がんの治療薬「オプジーボ」は、人間の体内で異物を攻撃する免疫反応のしくみを利用したもので、免疫ががんを攻撃し続けられるようにします。


本庶教授は受賞の記者会見で、「患者さんに『(助かったのは)あなたのおかげです』と言われると、自分の研究に意味があったのだと何よりうれしい」と述べ、「この治療法が広まり、地球上の全ての人が、恩恵を受けられることを願っている」と語りました。

日本人の医学生理学賞は、1987年の利根川進氏、2012年の山中伸弥氏、2015年の大村智氏、2016年の大隅良典氏が受賞しており、今回で5人目の受賞者です。


本庶教授は、科学者を目指す若い人に以下のアドバイスをしています。

『教科書に書いてあることが全部正しいと思ったら、それでおしまいだ。教科書は嘘だと思う人は見込みがある。丸暗記して、良い答案を書こうと思う人は学者には向かない。「こんなことが書いてあるけど、おかしい」という学生は見どころがある。疑って、自分の頭で納得できるかどうかが大切だ』


外山 滋比古氏( お茶の水女子大学名誉教授)もこのように語っています。

『この数十年で高学歴化は一気に進んだが、それと反比例するようにして行動力は下がっているのではないか。若い人を見ていて、そう感じることがよくある。イマジネーションが足りないと、仕事をするにも作業効率が悪くなる。いちいち過去の知識、前例を参照しようとするからだ。』


このコラムで繰り返し伝えてきたように、2020年から日本での大学入試は変わっていきます。単に知識の量だけを測るのはなく、受験生が自分の頭で答えを考え、自分の言葉で表現する力が重視されます。


「何かを知りたいという好奇心」から始まった本庶教授の免疫に対する実験は、「失敗」を当然伴うものでした。しかし「失敗」からの学びと新たな「挑戦」を繰り返すことにより、本当の思考力を持ち、本物の研究者となっていったのですね。偉大な方からは学べることが多くあります。

”人と自然を調和しながら『持続可能な未来』を共創する”