『これまで画期的なイノベーションというものが、
事前の予想と、それに基づく集中投資で生まれてきた
ケースはほとんどない。
画期的なイノベーションや破壊的イノベーションと
いうのは、常に想像もできなかったところから誕生してくる。』
加谷珪一さんが、現代ビジネスオンラインの「「5G」に
で述べていることです。
この話から想い出したのが、先日亡くなられたクレイトン・
クリステンセン教授(ハーバード大学経営大学院)。
「ディスラプション(創造的破壊)」で知られており、著書
『イノベーションのジレンマ』では、イノベーションを
「持続的」と「破壊的」の2つに分けました。
■持続的イノベーション=
「顧客の満足のために、今ある製品に起こした革新」
■破壊的イノベーション=
①「全く新しい製品やサービスを生み出すこと」
②「既存の製品のうち一部の価値に焦点を当てて、
顧客に価値を提供するもの」
教授は、破壊的イノベーションを生み出すためには
「顧客が本当に欲している機能」を見抜く必要があり、
それには「ジョブ理論」が役立つことを説明しています。
(顧客が、真に解消したいと思っている不満や達成したい
という願望、その解決に商品やサービスを用いることで
顧客の消費(雇用)の潜在的な可能性を見極める理論)
そして顧客のジョブ(願望)には、「機能的」(ジョブを
どのように成し遂げるか)、「感情的」(どんな感情を
味わいたいか)、「社会的」(周りからどのように見られ
たいか)という3種類があるといいます。
さて、冒頭の言葉で紹介した加谷さんは、次のように警鐘を
鳴らしています。
『日本企業は1990年代以降、急速に国際競争力を低下させたが
、その要因のひとつとされているのが、ソフトウェアに対する
理解不足である。1980年代までは基本的にハードウェア分野
における性能向上が重要なテーマだったが、1990年代以降は、
ソフトウェアを使った製品開発が競争力のカギを握るように
なった。日本企業はここで完全に出遅れ、現時点でもそれを
挽回できていない。』
これは、クリステンセン教授が説いた「顧客のジョブ」を
理解できていない、もしくは理解していても解決する
有効策を提示出来ていない状態。
しかしこのことは、通信業界だけでなく、様々な産業の全て
に共通することであり、私たち現代日本人が不得意とする
ところでしょう。
経済ジャーナリストの岩崎博充さんは、そのことをずばり
指摘しています。
『そして今大きな問題になっているのが、デジタル革命、
IT革命といった「イノベーション」の世界の趨勢に日本
企業がどんどん遅れ始めていることだ。
この背景には、企業さえも構造改革に対して消極的で
あり、積極的な研究開発に打って出ることができなかった
という現実がある。
欧米のような「リスクマネー」の概念が決定的に不足して
いる。リスクを取って、新しい分野の技術革新に資金を
提供する企業や投資家が圧倒的に少ない。
日本はある分野では、極めて高度な技術を持っているの
だが、マーケティング力が弱く、それを市場で活かし
きれない。過去、日本企業はVHSやDVD、スマホの開発
といった技術革新では世界のトップを走ってきた。
しかし、実際のビジネスとなると負けてしまう。技術で
優っても、ビジネス化できなければただの下請け産業に
なってしまう。もっとわかりやすく言えば、日本特有の
世界を作り上げて、そこから脱却できない「ガラパゴス
化」という欠点に悩まされてきた。
日本特有の技術に固執するあまり、使う側のポジション
に立てないと言ってもいい。日本が製造業に固執しな
がら、最先端の技術開発に終始している間に、世界は
「GAFA」(グーグル、アップル、フェイスブック、
アマゾン)に支配されていた。あまりにも残念な結果と
いえる。』
現代ビジネスオンライン)
『これまで画期的なイノベーションというものが、事前の
予想と、それに基づく集中投資で生まれてきたケースは
ほとんどない。画期的なイノベーションや破壊的イノベー
ションというのは、常に想像もできなかったところから
誕生してくる。当然のことながら5Gにもそれはあてはまり
、今の段階でどのようなサービスが出てくるか予想する
ことは難しい(予想できるサービスというのはたいてい
陳腐なものである)。
こうしたイノベーションを産業として実用化するにあたって
もっとも大事なことは、周囲が邪魔をせず、具現化した時
には一気にこれを普及させるスピード感と社会的コンセン
サスである。』
との加谷さんの指摘もその通りだと思います。
そしてそれには、「出る杭を打つでなく、出る杭を伸ばす」
という社会の意識変化が求められます。
『人材も資本も豊富にあるのですから、できないはずは
ありません。イノベーションの方法やフォーカスの方法を
変えるのです。自社株の買い戻しで株価を上向かせても、
純資産や純資産利益率(RONA)を上げても、成長の
メカニズムとは無関係です。問題の解決にはならないの
です。日本だけでなく、世界中の経営者が「思い違いを
していた」と、気づくべきです。』
(クリステンセン教授「フォーブスジャパン」2015.5.2)
多くのビジネスパーソンは、自身のスキルを高め、変化の
著しい社会に適応しようとしていることでしょう。そして
先人が言う通り、知識は活用してこそ活きてくるもの。
またティール型のように、個人の意識と行動の変革
を促進するような、組織の変革も大切です。
企業の人財育成の支援を通して、私もわずかながらでも
この変化を促進できるようにと願っています。
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